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遺産分割と特別受益
2012年1月5日
名古屋新瑞橋事務所 弁護士森田祥玄

「兄は生前に親からたくさん金銭的な支援を受けている!遺産分割ではその分も考慮すべきだ!」
という相談を受けることがあります。
今日は相続・遺産分割の中でも、「特別受益」のお話をします。
「生前に相続分をあらかじめ渡した」と評価できる場合、その財産も計算上相続財産に加算することがあります。
遺贈と生前贈与のふたつがありますが、生前贈与がよく争われます。
生前贈与は、「婚姻もしくは養子縁組のための贈与」と「生計の資本としての贈与」(民法903条)に限られます。
具体的には、
・不動産の贈与を受けている。
・相続人の一部が特別高学歴であったり、留学に行っている。
・結婚費用の援助を受けている。
・事業費用の援助を受けている。
などの場合に争点となります。
一度は弁護士に相談すべき事柄です。
但し、実際に特別受益として認定されるかはまさにケースバイケースです。
例えば結婚費用の援助ですが、結婚式の費用や家具購入費用の援助を受けても、簡単には特別受益にはあたりません。
結婚式の費用などとは別に、現金で持参金を渡したなどの場合は、特別受益にあたりやすいかと思います。
また、大学へ学費といっても、生活状況に照らして扶養の一部とみとめられる場合は特別受益にはあたりません。
不動産の贈与は比較的わかりやすいかと思います。しかし、例えば農地を頂いていた場合、その評価は難しいものとなります。
宅地に比べて農地は価格が低いのですが、宅地転用が可能ならば、価格も上がります。
最近は農地の転用が難しくなっているので、農地の価格は期待するほど高くならないというのが私の実感です。
なお、親から頂いた不動産を既に売却しているような場合、その財産が存在するものとして、相続開始時の価格で計算をします。
特別受益にあたるか否かのキーワードは、「相続分の前渡しと評価できるか否か」です。
また、特別受益とは別に、生命保険金の相談を受けることもあります。
金額が大きく、且つ、金額が明確なので、争点になりやすいところです。
相続人の一人が受取人とされた死亡保険金は、直接は特別受益にはあたりません。
しかし、あまりに著しく不公平といえる特段の事情がある場合には、民法903条1項を類推適用して、特別受益と同様の扱いをすることもあります。
例えば「まったく介護をしていなかった兄弟の一人にだけ遺産総額を上回るほどの生命保険金が入った場合」などは、この例外にあたるかもしれません。
この生命保険金の扱いを示した判例(最高裁平成16年10月29日)は、まだ新しい判例なので、例があまりありません。
一般的には相続人の一人が受取人とされた死亡保険金は、その受取人のものと考えることになるかとは思います。
よく見落としがちなのが、「親の不動産に子供が無償で住んでいた場合」です。
土地や建物を無償で使っていた場合など、その分を特別受益として扱うべきだという主張もあり、争点となります。
但し、同居をしている場合には、特別受益として扱わないとの判断がありうるかと思われます。
このような特別受益については、請求をする側は、一つ一つ弁護士に、特別受益にあたるか否かを確認する必要があります。
他方、私たちは、特別受益にあたると請求されている側から相談を受けることもあります。
この場合、
・特別受益にそもそもあたらない
・あたるとしても、被相続人は相続財産に含めないとの意思を有していた(持ち戻し免除の意思表示、民法903条3項)
などと主張をすることになります。
この持ち戻し免除の意思表示についても、よく争われます。
遺言などで、被相続人が相続財産に含めないと明記していれば、特別に得たお金も相続財産にはあたりません。
問題は、明記していない場合に、黙示の意思表示が認められるかです。
例えば先ほどの、「親の不動産に子供が独立して住んでいた場合」などは、黙示の意思表示の有無が争点となります。
最後は裁判官も悩むところです。
特別受益のほか、寄与分についてもよく相談を受けますので、また別の投稿で寄与分についても説明します。

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