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和解後の紛争
2012年6月8日
名古屋新瑞橋事務所 弁護士 森田祥玄

「一度合意して書面を作成したけど、やっぱり納得できない」 という相談を受けることがあります。

和解は、当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約束することで、効力が生じます。

「和解書」「示談書」「合意書」など、名称は様々ですが、法的には和解契約の合意をさすことが多いかと思います。

そして和解とは「争いをやめることを約束する」ものですので、その紛争を再度蒸し返すことは原則としてできません。

私が法律相談を受けるときも、やはり、 「一度合意書を結んだ以上、覆すのは原則としては難しいですよ」 と回答をします。

但し、例外的に、和解契約を結んでいても、交渉の余地が生じることもあります。

いくつか例を挙げます。

〔相談例1:交通事故〕

5年前に子供が交通事故に遭い、事故から1年で和解をしました。

子供はバイクに載っていて、頭を強く強打しています。

事故からだいぶ経ちましたが、子供は交通事故のことが忘れられないようで、現在もメンタルクリニックに通っています。

また、交通事故に遭ってから学校の成績も下がり、コミュニケーションもうまく取れなくなりました。

一度和解をしたのですが、もう一度保険会社と交渉することはできるでしょうか。

人間の体は複雑なので、和解をする当時に予期し得ない後遺症が発生する可能性があります。

そのような場合に、一度和解をしたからといって一切の請求ができないのは、あまりに酷です。

理論的には様々な見解がありますが、結論的には、 「4年前に締結した和解は、後遺障害が残存しないことを前提とした和解なのだ」 と考えて、実務では運用されています。

保険会社から渡される示談書(あるいは「免責証書」など)にも、「後遺障害の等級が認定された場合は別途協議する」などの条項が付されていることも多いかと思います。

当事務所が受けた類似の相談では、高次脳機能傷害ではないかとアドバイスを行いました。

訴訟にはなりましたが数千万円を受領することで和解をすることができました。

このように、交通事故では、後遺障害慰謝料及び逸失利益については交渉の余地があります。

特に高次脳機能傷害が疑われる方で類似の相談は増えています。

最判昭和43・3・15も交通事故の事案ですが、 「全損害を正確に把握し難い状況の下において、早急に、少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべき」 としています。

このような発想は全ての契約類型で、妥当する場面もあるかと思います。

〔相談例2:見舞金、贈与、賠償金〕

法的には私に支払義務はないのですが、道義的に謝った方がいいかと思い謝罪に行ったところ、朝まで謝罪を求められました。

朝方になり、やむを得ず○○○万円を支払うとの書面にサインをさせられました。

支払わなければならないのでしょうか。

このように、その場から逃れたくてお金を支払う、あるいは人間関係などを考え特に義務はなくても支払う合意をすることも、実社会においては見られます。

書面によらない贈与は撤回できるのですが、書面を作っている場合は原則撤回できません。

書面がなくても、既に支払っている場合、原則撤回できません。

しかし、一度和解や贈与の合意をした案件であっても、

・詐欺による取消し

・強迫による取消し

・公序良俗違反による無効

・錯誤無効

などで、争う余地がない訳ではありません。

強迫や詐欺が簡単に認められる訳ではありませんが、むしろ拒むべき場面もあります。

例えば未公開株詐欺、投資詐欺などの業者と金銭を支払うとの合意書を締結するケースも見られますが、弁護士名義で支払いを拒むことで解決に至ることもあります。

相談例2のように、一般の方同士の場合、難しい判断となります。

法律的には支払義務が生じるように思える場面であっても、裁判所の調停や弁護士会の仲裁あっせんなどの話し合いの手続を用いることで、一定の解決に至ることもあります。

「贈与を撤回したい」との相談を受け、調停を申立て、一定の解決に至ったこともありますので、一度相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。

〔相談例3:遺産分割協議〕

二人兄弟で、親が亡くなりました。

相続人は二人だけで、遺産総額は3000万円だと認識していました。

そこで、1500万円を受け取り、「その他の財産は兄が取得する」という遺産分割協議書にサインをしました。

しかし実際には1億円ほど遺産があることが、先日判明しました。

兄はそのことを認識していたのに、教えてくれませんでした。

もう一度遺産分割協議をやり直すことはできるでしょうか。

遺産分割協議書に伴うトラブルは多く存在します。

「遺産分割協議書を締結する前提の問題に違いがあった」 「遺産分割協議書にサインをしたのは介護をしてくれるのが前提だった」 「やっぱり納得的できないといって代償金の支払いを拒まれている」

などの相談が多い類型と言えます。

やはり他の契約同様、一度サインをしている以上、覆すのは困難です。

しかし、ケースバイケースであり、どうしても納得できなければ、調停などで再度話し合いをした方がよい場面もあるかと思います。

調停ではまとまらず訴訟となり、一定額上乗せをする和解をしたこともあります。

「一度した和解を覆したい」という相談は、頻繁にある法律相談類型の一つです。

私たちも絶対に覆せないときははっきりとその旨お伝えします。

また、 「法律的には厳しいけど、話し合いの手続をすることは考えられる」 とアドバイスをすることもあります。

弁護士のもとへ、相談だけでも訪れてはいかがでしょうか。

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