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「遺産分割について」
2012年9月3日
津島事務所 弁護士 南義隆

当事務所で,高齢者チームのチーム長をしております弁護士の南善隆です。

当事務所は,従来,交通事故や破産等様々な法分野について,弁護士間の知識及び経験を共有する観点から,弁護士でチームを構成し,所内研修や書式改訂作業を行い,実際の実務処理に役立てて参りました。

昨今,高齢者社会を迎え,より複雑化する高齢者案件についての知識や経験を弁護士間で共有し,実務処理にフィードバックするため,昨年より高齢者チームを立ち上げ,今まで以上に高齢者案件に特に力を入れております。

10月より新たに,弁護士,税理士,司法書士の3士業に同時に相談できる「高齢者案件専用相談窓口」を開設予定ですので,是非ご利用下さい。

高齢者案件は,相続税の申告や不動産の登記が関わる場面が多いため,弁護士だけでなく,税理士や司法書士に相談・依頼しなければならないケースがあります。そのような場合,本来個別に相談に行かなければならないところ,当事務所では3士業に同時に面談し相談できる窓口をもうけることで,相談者様及び依頼者様の物理的・時間的・精神的負担軽減を図りたいと考え,上記窓口を開設することといたしました。

さて,今回は,高齢者案件の中でもポピュラーな遺産分割案件の概要についてお話させていただきます。

遺言書がない場合,遺産は法定相続分通りに相続人間で分割されるのが原則ですが,一部の相続人により生前に引き出されているケースや,一部の相続人のみに多額の生前贈与がされている,特別に寄与した相続人がいるなど,法定相続分通りに分割した場合に相続人間で不公平となるケースがあります。

また,遺言書があっても,遺留分に配慮しない遺言書の場合には紛争が生じる可能性があります。

名古屋では,遺産分割案件は,名古屋家庭裁判所の遺産分割センターにおいて専属的に取り扱われております。

1 遺産分割の基準時

Q,「父が亡くなって,今ある預金を法定相続分通り兄弟で分けようと思いますが,弟が生前に勝手に引き出している預金が随分あるようです。生前の引き出し分も含めて遺産分割調停で解決できるのでしょうか」

A,遺産分割は,現在ある遺産を分ける手続きですので,「相続開始時」(被相続人が亡くなった時)ではなく,現在=遺産分割時の遺産を分けるに過ぎません。

よって,生前に引き出し分がある場合,それが生前贈与であれば特別受益の問題として遺産分割で考慮が可能ですが,無断で引き出した場合などは被相続人の当該相続人に対する不当利得や不法行為に基づく損害賠償請求権として,最終的に民事訴訟手続で処理されるべき問題となります。

要するに,今ある遺産は遺産分割調停事件(名古屋家庭裁判所で行われます)で解決を図るのに対し,過去の引き出し分については民事訴訟事件(訴額によりますが,一般的には名古屋地方裁判所で行われます)で解決を図ることになります。それぞれ別の手続きで解決を図らなければならないのは,依頼者様にとっても負担のかかることなので注意が必要です。

もっとも,遺産分割調停事件は話し合いの手続きですので,当事者間で生前の引き出し行為分も含めて調停における話し合いで解決できるケースもあります。

2 寄与分の主張の難しさ

Q,「兄弟の中で私だけが親が入所していた施設に毎日お見舞いに行き,施設の様々な手続きをしてきました。これは寄与分として考慮されないでしょうか」「私は,親の事業を引き継ぎ出資しましたが,これは寄与分として考慮されないでしょうか」

A,特別受益(生前に一部の相続人のみが遺産から利益を受けている場合)は,お金の流れが立証可能であれば,遺産分割調停においても考慮されます。

しかし,寄与分については,「特別の寄与」と評価できる寄与行為があり,それと,被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係が必要となりますので,実際の遺産分割事件で大幅に考慮されるのは難しいものとなっています。

寄与分の主張は,上記質問のように「療養看護型」と「事業関与型」に大別されますが,療養看護型については,まず「特別の寄与」と評価できるかが大きな問題となります。夫婦や直系親族間では扶助・扶養義務がありますので,それを超える程度の「特別な」寄与でなければ,寄与分として考慮されるものとはなりません。自宅介護を数十年間行った場合と,施設に入所し,週に1回程度お見舞いに行ったに過ぎない場合とでは,寄与分として評価されるかで決定的に異なってきます。被相続人の当時の病状やどのような療養看護を要したかが重要な指標となってきます。

次に,親の事業に出資した場合についてですが,被相続人と被相続人の営む会社とでは,法律上別人格ですので,直ちに因果関係は認められないということになります。

寄与分については,まさにケースバイケースの判断が必要となり,主張立証の難しい分野ですので,一度専門家に相談されることをお勧めします。

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