再婚した場合の養育費の減額・免除

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弁護士コラム Column

再婚した場合の養育費の減額・免除

2022年10月03日
名古屋藤が丘事務所  弁護士 浅野 桂市

Q. 令和3年6月、Xさん(男性)は元妻Aさんと子供B君の養育費について合意をしたうえで離婚をしました。その後、XさんはYさんと再婚をしました。そのため、XさんはAさんとのB君についての養育費をこれまでの合意通り支払うのが難しくなってしまいました。

​​XさんはAさんに対してB君への養育費を減額するよう求めることができるでしょうか?

A. Aさんと離婚をしてから再婚をするまでの期間、Yさんとの交際時期、Yさんとの間に子がいるか、Aさんとの養育費の合意時にAさんはYさんの存在を知っていたか(知らせていたか)等の事情を考慮して、養育費の減額が認められる場合があります。   

​​少し詳しく検討していきましょう。

はじめに

一般論として、養育費の減額が認められるには、養育費の金額の合意がなされた際に比べて、事情が変更しているといえることが必要になります。

​​そして、既存の合意等の変更をもたらす事情変更を認めるかどうかの判断においては、​①予測の範囲か否か、②減額請求が信義に反しないか(当事者の公平に反しないか)という点が考慮されています。

参考ブログ「この養育費,減額できるのはどんな時?

どのような場合に事情変更と言えるのか、具体的に見ていきましょう。

再婚によっても養育費が減額とならない可能性が高いケース

  • 元妻との養育費の合意がなされてから短期間(1年以内程度)で減額請求がなされたような場合
  • 義務者が再婚の予定があるにもかかわらずそれを元妻に言わずに養育費の合意をしたような場合
  • 元妻との養育費の合意時に既に再婚相手(交際相手)が義務者との子を解任していたような場合
  • 養育費の減額請求自体は元妻との養育費の合意から1年以上経ってからであるが、1年以内に再婚しているような場合

ただし、権利者(元妻)も、義務者がいつまでも再婚しないことを期待することはできないはずであり、義務者が合意後に交際を始めて再婚をした場合との均衡も考えると、2年程度経過して、子が就学するとか、新たな支出が必要となった場合には、諸々の事情を考慮して子を扶養家族として加えて事情変更にあたり得ると考えられます。

再婚によって養育費が減額される可能性が高いケース

  • 再婚をしたのが、元妻との養育費の合意後相当期間経過後(概ね1年以上)経過しているような場合

養育費の合意時、再婚の事情は予測できなかったと推認されるためです。

  • 元妻との養育費の合意後短期間で再婚したものの、子を懐妊したのは、再婚後であるような場合

再婚をしたとしても、子を懐妊するかどうかは分からないことから、元妻との養育費の合意時にその後懐妊して生まれた子については事情変更に当たると考えられます。

​​ただし、この場合、養育費の再計算の算定において、義務者が扶養すべきものとしては、再婚相手は含まず、生まれた子のみを算定の前提とするのが原則です。

次に、最初の事案とは逆に、権利者(元妻)が再婚をした場合、養育費の減額は認められるのでしょうか?


​この場合、元妻が再婚をしたというだけでは養育費の減額は認められないのが原則です。

​​​養育費は子どものための生活費ですので、再婚相手(男性)に当該子どもの扶養義務は発生しないため、権利者(元妻)の負担は変わらないからです。

​​そのため、元妻の再婚相手が当該子どもと養子縁組をした場合には、再婚相手(男性)に当該子どもへの一次的な扶養義務が発生するため、養育費が減額できる可能性があります。

では、元妻が再婚したことや再婚相手の男性が当該子どもと養子縁組をしたことを知らせず養育費を受け取っていたらどうなるでしょうか?


​この場合でも、養育費の減額がされるのは、養育費の減額請求をしたときからとされるのが原則で、養子縁組をした時までに遡らないとするのが一般的です。

養育費の減額手続き

当事者同士での話し合い

まずは、当事者同士の話し合いをすることが一般的です。 この話し合いの段階から弁護士を入れて交渉をすることもあります。 弁護士を入れて話し合いをすることで、法的に過不足のない主張ができるのは勿論、当事者同士の話し合いでよくあり得る感情的な対立や精神的な負担を抑えることができます。

​​なお、話し合いの内容は、書面やメールなど目に見える形として残しておくことをおすすめします。そして話し合いが合意に達した場合、その内容を執行認諾文言付き公正証書にすることをお勧めします。これにより、相手が約束した養育費を支払わない場合、相手方の預貯金や給与に強制執行をかけることができます。

養育費減額調停

話し合いで合意に達しない場合、養育費減額調停を申し立てることが考えられます。

​​調停では、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会を交えて養育費減額の話し合いをします。 調停で合意に達すれば、調停調書が作成されます。調停調書が債務名義となるため、相手方が養育費を支払わなかった場合も、強制執行をすることができます。

​​なお、調停でも話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判に移行します。

養育費減額審判

審判では、家庭裁判所が養育費減額を決定します。減額が認められるよう主張立証を尽くす必要があります。

最後に

これらはあくまで過去の裁判例を踏まえた一般論としての話です。皆さんそれぞれ事情が異なるうえ、お持ちの資料・証拠によっても結論が変わってきうるものです。

​​ また、一度取り決めた養育費の金額を減額するよう求めた場合、相手方は納得せず、もめるケースが多いです。

​​そして、これまでみてきたように、養育費の減額が認められるには、さまざまな要素を考慮したうえで、最終的に「これは養育費を減額させてもやむを得ない。当事者の公平に反しない。」と裁判官を納得させるよう主張立証する必要があります。

これまでみてきたように、一度決めた養育費を減額させることは決して簡単な道のりではありません。しかし、全く認められないわけではないので、あきらめずに一緒に頑張っていきましょう。

​​再婚をして養育費を払えない、あるいは見直しを考えたいといったお悩みを抱えていらっしゃる方はまずは一度弁護士に相談されることをお勧めします。

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