養育費の強制執行・差押えを弁護士が解説

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弁護士コラム Column

養育費が支払われない場合の強制執行・差押えについて弁護士が解説

2022年12月19日
津事務所  弁護士 森下 達

養育費を公正証書や調停で合意したにも関わらず,実際に養育費が支払われているケースは全体の4分の1程度というデータもあるようです。 今回は,養育費の不払いがある場合に,どのような手段で支払いを確保できるかを見ていきます。 ここでの支払い確保とは,民事執行法による強制執行を念頭に置いて説明いたします。

養育費の強制執行について

まず,養育費の合意がある場合は,

①調停(審判)もしくは(強制執行認諾文言付き)公正証書がある場合,
​ ②口頭の合意もしくは私的な協議書がある場合に分けられます。


​​ ①の場合には,強制執行の手続をとることができますが,②の場合には強制執行の手続をとることができません。 そのため,②の場合には,まずは養育費の調停(審判)もしくは(強制執行認諾文言付き)公正証書を取得することから始める必要があります。

養育費の強制執行の手続きの流れ

次に,養育費についての調停(審判)もしくは(強制執行認諾文言付き)公正証書がある場合には,基本的には強制執行手続きをとることが考えられます。 強制執行手続きとしては,典型的なものとしては,㋐財産開示手続き,㋑預金の差押え,㋒給与の差押えがあります。

​​ この強制執行手続きについて,令和元年5月に民事執行法の一部が改正され,新しい強制執行手続きが令和2年4月1日から施行されます。以下に,制度の変更点を見ていきます。

財産開示手続きについて

㋐の財産開示手続は,債務者(義務者)の財産を明らかにするための手続ですが,従来の手続では使うための条件が狭く,また違反しても刑事罰が科されないことから,実効性に欠けていると言われていました。

​​ 例えば,前記の条件というのは,強制執行認諾文言付きであっても公正証書の場合は財産開示手続きは利用できませんでした。

​​ また,財産開示手続きに違反した場合には,従来でも30万円以下の過料という制度はありました。しかしこれは刑事罰ではなく,また身体拘束も伴わないため,実効性に欠けていると言われていました。

これに対して,新しい財産開示手続きでは,強制執行認諾文言が付いていれば公正証書でも行うことができ,また違反した場合には6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑罰が科されることになりました。

​​ この制裁は刑罰であるため,違反すれば前科がつくことになりますし,場合によっては身体拘束がされますので,非常に強力な制裁であるといえます。このように強力な制裁を受けるのであれば,自発的に財産を開示する,もしくはそもそも養育費の不払いを行わないというケースが減ることが期待できます。

預金の差押えについて

㋑の預金の差押えは,銀行支店名を特定した上で行う必要があります。銀行名は分かっているけど支店名が分からないというケースでは,債務者の居住地の近くの支店を当てずっぽうに差し押さえることもあります。 この場合には,同支店に預金がなければ,差押えは空振りに終わることになります。

​​ これに対して新しい財産開示手続きでは,金融機関の本店に各支店での取引の有無の照会を求めることができます。これで各支店での取引の有無が判明すれば,差押えが空振りになるリスクを格段に減らすことができます。

給与の差押えについて

㋒の給与の差押えは,継続的に差押えを行うことができるため,養育費の回収の手段としては有効な手段です。しかし,債務者としても養育費の未払いを理由に給与を差し押さえられることは,金銭的にも心理的にも負担を抱えることになるでしょうから,給与の差押えがされた場合には,その職場を辞めてしまうことも少なくありません。

この場合には,改めて給与を差し押さえるためには,新しい職場を突き止める必要がありますが,これも容易なことではありません。 これに対して,新しい財産開示手続きでは,市町村や日本年金機構等の機関に債務者の勤務先を照会することができます。

​​これにより,債務者としては職場を変えても,容易には逃げられないことになります。 

​​ また㋑㋒のように,養育費を支払わずに逃げていても,結局は差押え元が見つけられるのであれば,最初から養育費の不払いを行わないということも期待できます。 

​​ このように,民事執行法の改正によって,従来よりも養育費の支払い確保を行い易くなったと言えます。 養育費について不払いがある場合には,一度,支払い確保を求める方法を検討することをおすすめします。   

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