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弁護士コラム Column

病院・医師がSNS等で風評被害を受けた場合の対応

2023年02月16日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 長沼 寛之

病院や医師の風評被害例

昨今、インターネットを使えば様々な口コミ・レビューを確認できるようになっています。飲食店については、口コミサイトで評価を見て選ぶ方も多いのではないでしょうか。我々弁護士や法律事務所にも口コミは確認できますし、病院においても同様です。 

​​ 医療機関でよく見かける口コミとしては、「看護師や受付の対応が悪い」「長時間待たされたのに、診察はすぐに終わった。ちゃんと診ずに、少し話をしただけで判断した」といった内容が多いように思います。

​​口コミの中には、病院側で真摯に受け止め、改善すべき点を指摘するものもありますが、そうでないものもあるというのが実態だと思います。

​​ SNSの投稿も同じです。SNSの拡散力は凄まじいものであり、正当性がなかったものであったとしても、一度炎上するとその影響は甚大なものになります。

​​某回転寿司チェーン店での客のいたずら動画が拡散した途端に、当該回転寿司チェーンの株価が大幅に下落しました。店側には非はないはずですが、一瞬で利用者は離れていきます。

病院としてできる対応

もちろん上記のような投稿がされないように対応することは重要ですが、医療機関側がどれだけ努力しても防げないものもあります。

​​悪意のある投稿がされた場合には然るべき対応をしなければなりません。

まずは投稿されているサイト運営者に対して、削除請求をすることが考えられます。
​さらに病院の名誉を害されたことに対する法的措置として、警察に告訴したり、民事上の責任追及として損害賠償請求を行うことが考えられます。​​

​​ただし、損害賠償請求を行うためには投稿者を特定する必要があります。​​口コミサイトやSNSの多くは匿名で投稿されているので、投稿者(発信者)を特定するための手続きが必要になります。

弁護士へ対応を依頼するメリット

口コミ等の投稿削除の場面を法的見ると、投稿者側の表現の自由と病院側の名誉権が衝突していることになります。

​​病院に対する正当な評価・批判でれば表現の自由として保護されることになり、投稿を削除することが表現の自由に侵害になってしまいます。

​​そのため、サイト運営者に投稿の削除を求める場合、投稿によってどのような権利が、どのように侵害されているか記載するよう要求されます。かかる記載が具体的にできなければ投稿は削除されません。

​​単なる事実の羅列ではなく、法的な評価を行い、当該投稿が法的保護に値しないものであると記載することは、一般の方では難しく、弁護士の方が長けています。  

​​また、病院特有の問題として、事情説明を具体的に記載しにくいということもあります。

​​例えば、せん妄がひどく、点滴を自己抜去したり、動き回ったりする患者に対し、止む無く身体拘束をしていた時に、偶然その病室を見た他の利用者が、SNSに「●●病院は、患者をベッドに固定して拘束していた。違法に患者の権利を侵害する最低な病院だ。」と投稿したとします。

​​この場合、病院として、

​​「患者は●歳で、せん妄があり、医師や看護師の説明・指導を守らなかった。点滴の自己抜去や、ベッド柵を乗り越えようとしている場面が確認されていた。転倒リスクが高く、既往症に●●があり、転倒した場合は、重度の傷害が生じる可能性があった。身体拘束はあくまで一時的なものであり、●月●日の●時から●時までしか行っておらず、必要最小限のものであって、違法性はない。」

​​
と反論して、投稿の削除を求めることができるでしょうか。

​​ ここまで具体的にすると、今度は個人情報保護の問題が出てきます。

​​投稿の不当性、事実と異なることを説明するためには、事実を抽象化する必要があります。逆に事実を抽象化しすぎると、投稿に正当性がないことを説明できません。

​​このあたりのバランスを調整することが難しくなりますので、弁護士に相談することも検討されてはいかがかと思います。

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