持続化給付金の不正受給の仕組みとは?~なぜ持続化給付金詐欺が横行してまったのか~

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弁護士コラム Column

持続化給付金の不正受給の仕組みとは?~なぜ持続化給付金詐欺が横行してまったのか~

2022年06月23日
日進赤池事務所  弁護士 鈴木 嘉津哉

1 はじめに

ここ最近、数億円規模の持続化給付金詐欺事件が複数報道されています。持続化給付金という制度については、報道を見聞きするまで、そもそもその存在を知らなかったという方も多いかもしれもせん。そこで、本稿では、持続化給付金とは何か、なぜ数億円規模もの持続化給付金詐欺が横行してしまったのかという点について述べていきたいと思います。

2 持続化給付金制度とは何か?

2-1 制度の目的等

持続化給付金制度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支えるためなどの目的で、給付金を支給する制度です。申請期間は、2020年(令和2年)5月1日~2021年(令和3年)2月15日までであり、現在は、受付を終了しています。

2-2 対象者は?

農業、製造業、飲食業、作家・俳優業など幅広い業種で、法人・個人の方が対象となります。

2-3 支給額は?

法人は最大200万円、個人は最大100万円が支給されます。

3 持続化給付金の給付要件~個人の場合を中心に~

3-1 給付対象者

持続化給付金の給付対象者とは、フリーランスを含む個人事業者とされています。個人事業者とは、法人を設立せずに雇用ではなく、個人で事業を営む人であるとか、税務署に開業届を提出し、事業を営む人などと定義されています。

​​また、フリーランスとは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者などと定義されています。  
​  
​要するに、会社から給料をもらうサラリーマンなどではなく、店を経営するなどして、自分でお金を稼ぐ人のことをいいます。

​もっとも、このように定義されていたとしても、実際に、ある人が個人事業者(又はフリーランス)であるかどうかというのは微妙なケースも多く、明確に線引きできるものでもありません。

​​そこが、持続化給付金詐欺が横行してしまった原因の一つであるともいえます。

3-2 給付要件

持続化給付金は、個人事業者等であれば誰でも受給できるわけではなく、以下の2つの受給要件があります。

  1. 2019年(令和元年)以前から事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること
  2. 2020年(令和2年)1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(対象月)があること

2の要件が少し分かりにくいので例を挙げると、例えば、Aさんが経営する飲食店が、新型コロナウイルス蔓延の影響で、2020年に入ってから客足が遠のき、前年より売上が下がったとします。

​​このとき、2020年に入ってからの各月の売上と2019年の同じ各月の売上を見比べます。

【2020年】 【2019年】
1月  50万円 1月 50万円
2月  40万円2月 90万円
3月  20万円3月 30万円
4月   5万円4月 50万円

上記のような売上だったとき、給付要件を充たすのは、2月と4月になります。注意が必要なのは、売上の減少は、あくまで前年同月比なので、例えば、2019年2月の売上に比べて、2020年3月の売上が50%切っているなどといった見方はできないことになります

なお、確定申告で青色申告を行っており、上記のように、各月の売上について明確に分かる人であれば、前年の対象月を比べればよいですが、白色申告を行った人などのように、前年各月の売上を算出できない人は、2019年の1年間の売上を12で割った額をひと月の売上とみなし、2020年の各月の売上額と見比べることになります。

3-3 給付額の算定方法

持続化給付金の給付額は、最大100万円とされていますが、給付額は、以下の計算方法で算出されます。

前年の総売上(事業収入)−(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)

例えば、給付要件の欄で挙げた例によると、Aさんの飲食店が、2019年の1年間で500万円を売り上げたとして、要件を充たす月である2月と4月を基準としてそれぞれ計算すると

500万円 - (40万円【2020年2月売上】×12)=20万円
​ 500万円 - (5万円【2020年4月売上】×12) =440万円
となります。​

この場合、Aさんは、2020年4月を基準にした方がより多くの給付金をもらえるので、4月を「対象月」として申請に、最大額である100万円を給付金としてもらえることになります。

4 持続化給付金の申請手続

持続化給付金は、申請専用ホームページにアクセスし、必要事項の入力と証拠書類の添付のみで申請することができます。

​​証拠書類は、①2019年度の確定申告書、②2020年の売上台帳、③通帳の写し、④身分証明証です。 

​②の売上台帳は、形式は定められておらず、白紙に手書きしたものであっても一応は証拠書類とみなされます。

​​申請が受理された後は、証拠書類の詳細な確認はなされず、形式的な要件不足(証拠書類の不足や必須入力欄の未入力など)さえ無ければ、大抵は審査が通ってしまうという実情でした。

5 持続化給付金の不正受給の仕組み

持続化給付金制度については、いくつかの要因によって、不正受給が横行してしまっていたのが実情であり、その結果、現在になって、それらの不正受給について、詐欺事件として立件されています。

​​以下では、不正受給の仕組みや考えられる原因について触れていきたいと思います。

5-1 持続化給付金詐欺の仕組み~巨額詐欺事件に発展する流れ~


​持続化給付金は、手続や審査が簡単であるにもかかわらず、最大100万円をもらえるということで、ある程度の税金に関する知識や公的給付金に関する知識があれば誰でも申請ができることから、詐欺グループの主犯などは、まずは、要件を充たさなくとも、実際に自分で申請を行って、100万円を受給するというケースが多いです。

そして、詐欺グループの主犯は、自分のみならず、第三者を誘い、申請方法や確定申告のための税理士を紹介するなどと言って、その代わりに、仲介料等の名目で一定の額のお金を支払わせるという方法を取ります。

その後、グループ主犯から持続化給付金の紹介を受けた第三者が、さらに別の第三者を給付金申請に誘い、仲介料を受け取って、仲介料の一部を主犯に渡すという流れができ、ねずみ算式に申請者を増やし、結果的に、巨額詐欺事件に発展してしまうのです。

5-2 持続化給付金詐欺が横行してしまった原因

持続化給付金詐欺事件が横行してしまった原因としては、いくつかの原因が考えられます。
​以下では、その原因についていくつか触れていきます。

5-2-1 確定申告の申告期限が延長されていた

持続化給付金申請のためには、確定申告書が必要ですが、確定申告は、原則として、毎年3月までに行うこととなっています。

​​この点、持続化給付金の申請開始は、2020年5月1日からだったので、その頃に持続化給付金の存在を知った個人事業者ではない人(受給要件の無い人)は、2019年の確定申告期限が過ぎているので、本来、申請すらできないことになります。

​​しかし、この当時、新型コロナウイルス蔓延の影響により、確定申告の期限が延長されており、2020年4月以降であっても、2019年分の確定申告ができる状態でした。

​​このような状況を利用して、個人事業など営んでいない人でも、持続化給付金の存在を知った後に、比較的容易に2019年分の確定申告書を用意できたというのが、申請者が増えた原因の一つと考えられます。

5-2-2 持続化給付金は、給付までのスピードが求められる制度だった


​持続化給付金は、新型コロナウイルス蔓延の影響により事業の継続や日々の生活に困窮している人に対する給付金でした。

​​そのような給付金について、給付までの審査等で時間がかかるとなると、明日の生活にも困っているという人を救うことができないので、比較的容易な条件と審査により給付金を支給する必要がありました。 持続化給付金詐欺は、そのような要請から、審査をある程度緩くせざるを得なかったという事情の隙をついた犯行であるといえます。

5-2-3 「フリーランスを含む個人事業者」という対象者の定義が曖昧だった


​持続化給付金の対象者については、飲食店の経営者などであれば「個人事業者」と考えて問題はないと思います。

​​しかし、「フリーランスを含む」とも定義されており、では、フリーランスとは何か?と考えると、一概には認定することが困難です。

​​例えば、普段は会社勤めをしており、会社から給料をもらっている人であっても、個人的にネットオークションや個人売買サイトなどで継続的に取引を行っており、利益を上げている人については、場合によっては、フリーランスないし個人事業者に該当するケースもあります。

​​また、現場作業で一定期間働く人などについて、雇用契約書等を作成しておらず、それが雇用契約なのか、それとも雇用ではない業務委託契約なのかはっきりしない場合も多く、その契約の結び方や実際の働き方などによって、雇用なのか個人事業なのかといった判断が分かれ得るものです。

​​このような定義の曖昧さを利用して、詐欺グループ主犯が 「転売サイトで1回でも物を売ればフリーランスになる。」 「あなたのバイトは業務委託契約だったということにすれば大丈夫。」 などと言って申請に誘うといったことをしていました。

5-2-4 給付金申請に当たって税理士又は税金に関する一定の知識を有する自称コンサルなどが関与するケースも少なくなかった


​個人事業など営んでいない人にとっては、確定申告や給付金申請などと言われても、そのやり方は分からないと思います。

​​そのような人に対して、詐欺グループの主犯は、自称コンサルや場合によっては税理士を紹介し、確定申告を行ってもらったり、申請手続の補助をしてもらったりするなどして対応をしていました。

​​税理士や自称コンサルなどは、持続化給付金の申請が詐欺であることを知っているケースもあれば知らないケースもありますが、いずれにせよ、誘われた申請者が、容易に持続化給付金の申請をできる環境が整えられていたというのが、巨額詐欺事件にまで発展した原因の一つだといえます。

5-2-5 最大100万円という大金の給付であり、グループ主犯も「違法じゃない」などと説明していた


​やはり、簡単な申請手続で100万円が手に入るとなると、興味を示すのは普通であると思います。

​​興味を持ったとしても、逆に、「そんな簡単に大金が手に入るのか。」「怪しくないか。」などとも思うかもしれませんが、詐欺グループの主犯は、そのような不安に思う心理に対して、「違法じゃない。」「警察には分からない。」「みんなやっている。」などと説明し、申請への心理的抵抗を少なくするといったことを行っていました。

他にも、持続化給付金詐欺に及んでしまう原因というのは、様々なものがあるとは思いますが、考えられる主な原因としては、上記の原因が考えられます。

6 持続化給付金の不正受給が発覚したらどうなるか?


​持続化給付金の不正受給は、詐欺罪になります。

​​詐欺罪になるのは、詐欺グループの主犯や持続化給付金の申請名義人だけではなく、場合によっては、申請者を誘った仲介者、申請を補助した人も共犯として立件される場合があります。

​​また、不正受給であれば、受給した額を返金する必要があります。 さらに、嘘の数字で確定申告をした場合には、それを修正する手続をする必要もあります。

​​持続化給付金の不正受給について、刑事事件となった場合にどうなるかは「持続化給付金の不正受給は逮捕される?」のコラムもご覧ください。

7 最後に


​持続化給付金の不正受給については、大きな規模の事件になっているものも多く、仮に、不正受給を行ってしまっていたとしたら、いずれ事件として立件され、最悪の場合、逮捕されて起訴されるという可能性もあります。

​​もし、持続化給付金の不正受給をしてしまい、捜査機関からの捜査を受けるなどしてお困りの方がいれば、是非一度、弊所弁護士までご相談ください。

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