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弁護士コラム Column

離婚で年金分割をしないとどうなるのか

2022年07月28日
日進赤池事務所  弁護士 水野 憲幸

年金分割は、離婚をしたら自動的に行われるということはありません。 年金分割は、将来の年金の受給額に影響します。

​​特に婚姻期間が長期の場合で、専業主婦(主夫)といった場合は、年金分割を行わないと、年金分割を行った場合に比べて、将来の年金額が大きく減少してしまう可能性があります。 老後の生活に備えるためにも、年金分割の手続きを確実に行う必要があります。

年金分割を行う期限、対象、種類、手続きについて

期限について

手続きの期限は離婚後2年以内となります。​期間が過ぎてしまうと手続きができませんので、注意が必要です。​通常2年以内ですが、元配偶者が死亡すると、死亡から1カ月以内に手続きを行う必要が生じます。従って、2年の期間があると思わずに、離婚後には速やかに手続きを行うことが望まれます。

対象について

年金分割の対象となるのは、厚生年金と以前の共済年金(共済年金は厚生年金に一元化されています。)のみとなります。国民年金のみの加入の場合は、年金分割を行うことはできません。

​​例えば、相手方が自営業者で、厚生年金や共済年金が無く、国民年金にしか加入していない場合は、年金分割を行うことはできません。また、確定拠出年金等についても、年金分割の対象とはならず、財産分与において解決する問題ということになります。

種類について

年金分割の種類としては、夫婦間で合意を行う手続きが必要となる合意分割と、合意が必要とならない3号分割があります。

​​3号分割のみの場合は、配偶者の合意が必要とならず単独で手続きを行うことが可能です。3号分割のみの場合は、婚姻(事実婚を含みます。)の開始が、平成20年4月1日以降であり、厚生年金・共済年金加入期間の全期間について、3号被保険者である場合です。

​​3号被保険者というのは、厚生年金加入者に扶養されている年収130万円未満の配偶者で、自身で国民年金保険料を納めなくても、国民年金加入者になっている方です。

​​これ以外の場合は、合意分割が必要となります。

手続きについて

  (1)3号分割のみの場合​​

離婚後に必要書類を揃えて年金事務所等に行き、手続きを行うだけです。相手方の了解は必要ありません。分割の割合としては、0.5(2分の1)となります。

(2)合意分割について

最も多いと考えられる年金事務所での手続きを解説します。

①情報通知書の取得

​​まず、年金事務所において、年金分割のための情報通知書を取得する必要があります。申請をしてから取得するまでに多少時間がかかります。予約の要否等、取得の手続きについては年金事務所にご確認下さい。

​​②割合の合意

​​年金分割の按分割合の合意をする必要があります。通常は0.5となります。特に裁判所においては、0.5以外の主張を行っても、0.5以外となることはなかなか難しいのが実情です。

​​もっとも離婚の条件の交渉材料として、年金分割の請求を行わないということ等を定めることはあり得ます。また、年金分割以外の離婚条件が整っている場合は、年金分割を除いて合意し、年金分割については、離婚成立後に、裁判所の審判にて解決するという方法もあります。

​​③合意の方法

​​実際に年金事務所に申請を受け付けてもらう必要がありますが、年金事務所が受け付けてくれる合意の方法は限定されています。

ⅰ 裁判所作成の書類(調停調書、審判書、判決、和解調書)
​ⅱ 公証人役場で作成する公正証書
​ⅲ 公証人役場での私署証書認証
​ⅳ 離婚成立後に夫婦2人で年金事務所で手続き

離婚成立後に夫婦2人で年金事務所に行く手続きは、コストの面では大変に良い手続きですが、相手方の協力を得られなければ、結局裁判所の手続きを行うしかなくなるというデメリットがあります。

​​離婚するまでは、連絡が取れていたのに、離婚が成立したら急に連絡が取れなくなるというケースはあります。

​​年金事務所に一緒に行くことを約束していても、それを強制することは残念ながらできません。 そのため、手続きについては、相手方の関係性によって正しく選択する必要があります。

​​他の手続きは、年金事務所での手続き自体は、相手方の協力が無くても行うことが可能です。離婚後に相手方が翻意したとしても、手続きが可能という点がメリットとなります。 ​


​​協議離婚を行う際には、養育費等、年金分割に限らず、公正証書にしておいた方が良いケースが多いと思われますので、離婚の公正証書を作成する際に、年金分割についての公正証書も作成すれば、それ程手間も必要ではありません。    

​​裁判所での手続きの場合は、情報通知書を裁判所に提出する必要があります。​裁判所からも、年金分割についてはどうするか尋ねられることが多いかと思います。

上記の通り、裁判所では按分割合については0.5と定めることが大半ですので、相手方が応じない場合は、裁判所の手続きを利用することをお勧めします。

年金分割を含めて、離婚においては決めなくてはならないことが多いので、手続きとして、 どの手続きを利用した方が良いのかは、ケースによって異なりますので、弁護士とご相談下さい。​​

通勤途中に転倒や事故に遭う等し負傷した場合

2022年06月30日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 小木曽 裕子

通勤途中に転倒や事故に遭う等し負傷した場合、通常、通勤災害として労災保険の使用が可能です。
しかし、通勤の途中には、食事をしたり、コンビニやスーパー等で買い物をしたりと、寄り道をすることも多いと思います。
このような場合に労災保険が使用できるのでしょうか。
労災保険法では、通勤について以下のとおり定義しています。

1 寄り道をした場合の労災適用

しかし、通勤の途中には、食事をしたり、コンビニやスーパー等で買い物をしたりと、寄り道をすることも多いと思います。 このような場合に労災保険が使用できるのでしょうか。 労災保険法では、通勤について以下のとおり定義しています。

労災保険法第7条

② 前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。  
 ​一 住居と就業の場所との間の往復  
 ​二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動  
 ​三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

​​ ③ 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

上記のとおり定義されておりますので、通勤を逸脱・中断した場合には、原則として、その逸脱・中断中はもちろん、その後通勤経路に戻っても、もはや労災保険の使用はできないことになります。

​​この逸脱・中断が日常生活上必要な行為として認められている一定の場合には、その後通勤ルートに戻った後の負傷は労災使用が可能となります。

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この「逸脱・中断」や「日常生活上必要な行為」については、通達(昭和48年11月22日基発644)において例示されており、下記のようなことが示されています。

「逸脱・中断」に該当するケース

  • 麻雀を行う
  • 映画館に入る
  • バー等で飲酒
  • デートのため長時間に亘ってベンチで話し込む

「逸脱・中断」に該当しないケース

  • 経路上に店でタバコ、雑誌等を購入
  • 経路上に店で、渇きをいやすため、ごく短時間お茶やビール等を飲む

「日常生活上必要な一定の行為」

  • 独身者が食堂に立ち寄る
  • クリーニング店に立ち寄る

以上のとおり、通勤から外れた行為を行った場合でも、一定の場合には労災保険の適用が可能となります。

2 自賠責保険や任意保険の使用

車両が絡んだ通勤中の事故の場合、労災保険の他に、自賠責保険や任意保険から補償を受けられることがあります。ただし、いずれかの制度から補償を受けた場合は、同一目的で重ねて別の制度から補償を受けることはできません(損益相殺)。

​​ この場合に、どの制度から補償を受けるべきか悩まれるものと思いますが、この判断要素として、過失相殺や、労災特別給付金が挙げられます。

(1) 過失相殺

① 労災保険

​​ 労災保険給付に過失相殺はありません。そのため、過失が10割あったとしても、労災給付は過失相殺されることなく受けることができます(ただし、故意や重過失によって起こした事故は支給制限があります)。

② 自賠責保険

過失が7割未満であれば、過失相殺されないものとされています。ただし、傷害による損害(後遺障害・死亡以外)については、支給される金額が120万円までとされており、120万円を超える金額については任意保険にて対応されることとなります。

③ 任意保険

通常、過失割合に応じた金額が支給されることとなります。

(2) 特別支給金

特別支給金は、労災保険法に基づき支給されますが、保険給付ではなく、福祉の増進を目的として、休業、後遺障害、死亡を事由として支給されるものです。 保険給付ではないため、労災や自賠責、任意保険から保険給付を受けていても、損益相殺されることはありません。 なお、主な支給内容は以下のとおりです。

【定率または定額の特別支給金】

①休業特別支給金 休業 4日日から 1日につき給付基礎日額の 20%相当額
​ ②傷病特別支給金 ※療養開始後、1年6か月を経過しても、傷病が治っておらず、その傷病が下記等級に該当する場合に支給 等級に応じ、下記一時金。

傷病等級
1級114万円
2級107万円
3級100万円

③ 障害特別支給金

障害等級
1級342万円
2級320万円
3級300万円
4級264万円
5級225万円
6級192万円
7級159万円
8級65万円
9級50万円
10級39万円
11級29万円
12級20万円
13級14万円
14級8万円

④遺族特別支給金 300万円

【賞与を算定基礎とする特別支給金】

持別給与を算定基礎とする特別支給会の支給額は、算定基礎日額をもとにして計算されます。

​算定基礎日額 = 被災日以前1年間に受けた特別給与の額(算定基礎年額) / 365​

ただし、算定基礎年額は、給付基礎日額(年金たる特別支給金が支給される場合は、法第8条の2第1項に規定する年金給付基礎日額)に365を乗じて得た額の20%に相当する額又は150万円のいずれか低い方の額が上限とされています。

① 傷病特別年金
​病等級に応じて次表の年額が支給されます。

傷病等級算定基礎日額
1級 313日分
2級 277日分
3級245日分

② 障害特別年金
​害等級に応じて、次表の額の年金が支給されます。

障害等級算定基礎日額
1級 313日分
2級 277日分
3級 245日分
4級 213日分
5級 184日分
6級 156日分
7級 131日分

③障害特別一時金
​害補償一時金又は障害一時金を受ける者に対し、障害の程度に応じて、次表の額の一時金が支給されます。

障害等級算定基礎日額
8級 503日分
9級 391日分
10級 302日分
11級 223日分
12級 156日分
13級 101日分
14級56日分

④遺族特別年金
遺​族の数等に応じて次表の額の年金が支給されます。

遺族の数算定基礎日額
1人 153日分(※)
2人 201日分
3人 223日分
4人以上 245日分

※ ただし、その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害の状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分がいないとき

上記以外にも給付される内容がありますので、詳細は労働局HP等をご確認下さい。

労災保険給付の請求用紙は特別支給金の請求用紙を兼ねているため、労災保険請求を行えば、同時に特別支給金の請求も行っていることになります。

​​以上のとおり、過失相殺の面や、特別支給金の面からも、労災請求にはメリットがありますので、支給事由に該当する場合には、請求をご検討下さい。

医療機関におけるハラスメント(パワハラ・セクハラなど)

2022年03月16日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 木村 環樹

 当然のことですが、医療機関(病院・診療所)では、医師、看護師、看護補助者、検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、医療事務など、各種職種の職員が就労しています。このため、職員同士のトラブルが発生することがあり、時にハラスメントに発展することがあります。
 ​ ハラスメントの具体的内容、ハラスメントの相談がなされた際の医療機関(使用者)としての対応方法などについては、厚生労働省のホームページで各種指針・パンフレット・リーフレット・研修資料が掲載されています。職員からハラスメントの相談があった場合、医療機関内でハラスメント研修を行いたい場合などには、これら資料を参照すると大変勉強になります。
 ​ また、厚生労働省のホームページには、カスタマーハラスメントについてのマニュアル・リーフレット・ポスターも掲載されています。医療機関では、患者から厳しい苦情・指摘を受けることがあります。患者からの苦情・指摘は、医療機関のサービス向上に役立つものではありますが、行き過ぎた苦情はハラスメントに該当することとなります。このような場合の対応方法についても、これら資料を参照すると大変勉強になります。
 ​ 弊所では、弊所弁護士が医療機関に訪問させていただき、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、カスタマーハラスメントなどについての職員研修を行うことも対応しております。ご要望等ございましたら弊所までお問合せください。また、実際に、医療機関内で発生したハラスメントの対応(加害職員への指導対応、被害職員へのフォロー対応など)についても、相談に乗らせていただいておりますので、お問合せください。

離婚に関する税金!?

2022年03月07日
名古屋丸の内本部事務所  税理士 大橋 由美子

通常、一定額以上の現金を他人に贈与(渡す)する場合には贈与税が課税されます。

しかし、財産分与として相当と認められる額であれば贈与税が課税されないことになっています。

しかし! 現金ではなく不動産を財産分与として相手に渡した場合は

一度、不動産を相手に売って現金化してから、その現金を渡したという解釈をされます。

下記のように三段階となります。

この時、不動産を売却した(相手に渡した)側は、不動産も無くなった上、

その不動産の売却価額が取得した時の価額より高い場合、譲渡所得税が課税されます。

☆居住用不動産の場合などは、一定の控除もありますが、

申告することや一定の要件がありますので、あとで気づいた時には遅いという可能性もあります。

今からでも相続放棄できる? ~3か月を経過した後の相続放棄について~

2022年03月01日
津島事務所  弁護士 浅野 桂市

相続放棄の手続は、原則として、自分が相続人となっていることが分かってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てることによってする必要があります(民法915条1項本文)。 では、この期間を経過してしまった場合には絶対に相続放棄はできないのでしょうか? この点についての先例となっている裁判例を2つ紹介します。

​​ 1つ目は、最高裁昭和59年4月27日判決(民集38・6・698)です。
​ 当該判例は、相続放棄の起算点について、「3か月以内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、そのように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識したときまたは通常これを認識しうべかりしときから起算するのが相当である。」旨判示しています。

​​ 2つ目は、東京高決平成12・12・7(家月53・7・124)です。
​ 当該裁判例は、被相続人の遺言の内容から自らは被相続人の積極及び消極の財産を全く承継することがないと信じた場合には、「相当の理由」があるとして、相続放棄の申述受理の申立てを認めたものです。この裁判例は、遺言があっても、その内容から、上記最高裁の判例のいう「正当な理由」があると判断した事例です。

​​ このように、3か月以内に相続放棄をしなかった(できなかった)ことについて、「相当の理由」があると認められれば、相続放棄が認められる場合もあるのです。
​ もっとも、「どのような場合に「相当な理由」があるか、ということは高度に専門的で、個々の事案・資料の有無等によって変わってくるため、弁護士に相談することを強くお勧めします。
​ 「相当の理由」が認められるのはあくまで例外の話であるため、一定のハードルはありますが、相続を知った時から3か月が経過してしまっているから絶対に相続放棄はできないとあきらめるのではなく、お手持ちの資料をご持参のうえ、なるべく早く弁護士に相談しましょう。