弁護士コラム|遺産分割と相続税との関係③|名古屋丸の内本部事務所

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弁護士コラム Column

遺産分割と相続税との関係③

2021年10月19日
岐阜大垣事務所  弁護士 石井 健一郎

 弁護士の石井健一郎です。
 ​ 今回の記事では前回・前々回の記事のつづきで架空の事例を用いて特に相続『税』に関する問題の一端に触れてみたいと思います。

​​ 【事例】
​ 夫,妻,成人済みの子ども1人で同居する3人家族において,夫が亡くなりました。
​ 亡くなった当時の夫の財産には以下のとおりのものがあります。
​ 土 地  …3500万円
​ 家 屋  …1000万円
​ 現預金  …1000万円
​ 株 式  … 500万円
​ 死亡保険金…3000万円(受取人は妻)

​​ ※遺言書はないものとします。

​ ​ 以上のケースにおいて,相続税の処理はどのように進むのでしょうか。
 ​ 今回は、実際の相続税の算出について説明をいたします。

​  ①の事例:遺産分割と相続税との関係①
​  ②の事例:遺産分割と相続税との関係②

​​ 【相続税の算出】 上記の事例における具体的な相続税を算出してみましょう。

​​ ⑴ 死亡保険金の取り扱いについて
 ​ 死亡保険金における非課税限度額は500万円×法定相続人(相続放棄をした者も含む)となりますので,妻が3000万円の死亡保険金を受け取る場合,2000万円が課税価格になります(3000万円―500万円×2=2000万円)。

​​ ⑵ 不動産の取り扱いについて
 ​ 土地に関して,小規模宅地等の特例(※1)が利用できる場合においては,土地の評価額の80%を課税対象から減じることができます。
 ​ この場合,土地の課税価格は700万円となります(3500万円×20%=700万円)。

​​ ※1…特定の親族が相続した土地のうち,330㎡以内の範囲に限られます。もっとも,大きさとしては約18m四方程度(約100坪)となりますので,一般的な規模の宅地においては全部分が適用を受けることになろうかと思われます。
 ​ 詳しくは国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)をご覧ください。

​​ ⑶ 課税総額からの基礎控除額
 ​ 以上より,課税価格総額は以下の通りになります。
 ​ 土地   … 700万円
 ​ 家屋   …1000万円
 ​ 現預金  …1000万円
 ​ 株式   … 500万円
 ​ 死亡保険金…2000万円
 ​ 合計   …5200万円
 ​ 
 ​また,相続税の基礎控除額は,3000万円+法定相続人×600万円となっていますので,本事例では4200万円(3000万円+2×600万円)の控除を受けることが可能です。 したがって,課税価格(課税の基準となる金額)は1000万円(5200万円―4200万円)となります。

​​ ⑷ 各人の具体的相続金額に応じた税額控除の検討
 ​ この段階で税額控除があるか否かを検討する必要があります。税額控除の基準となる相続額は法定相続分に応じて算出されますので,課税価格総額が1000万円の場合,各人の課税価格は妻が500万円,子どもが500万円となります。
 ​ そして,相続税の税率表(※2)によれば,500万円の場合の課税率は10%となっていますが,相続分に応じた控除額は各人いずれも0円となっていますので,妻と子どものいずれも税額控除を受けることはできません。

​​ ※2…国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

​​ ⑸ 具体的な相続税額の算出
 ​ ⑶と⑷より1000万円の10%である100万円が遺族全体に課税される相続税となります。そして,実際の相続税の負担は各人の財産の取得割合に応じることになるため,具体的な相続税の金額は妻が66万6000円,子どもが33万3000円となります(千円未満切り捨て)。

​​ ⑹ 配偶者の相続税額軽減の特例(※3)の適用
 ​ 配偶者の相続税額軽減の特例を適用した場合,配偶者が実際に取得した財産(相続財産,みなし相続財産含む)につき,法定相続分相当額か1憶6000万円のいずれか多い金額までは非課税となります。
 ​ 本件では,妻の取得財産は6000万円であり,上記の1億6000万円を下回っていますので,実際に徴収される相続税は0円となります。

​​ ※3…国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

​​ ⑺ 結論
 ​ 以上より,本件相続による相続税は,全体で33万3000円となります(内訳・妻…0円,子ども…33万3000円)。
 ​ もっとも,上記で利用した「小規模宅地等の特例」及び「配偶者の相続税額軽減の特例」を利用するにあたっては,その旨の申告が必要です。仮に,これらの制度の利用を失念していた場合には具体的な課税額は470万円にも跳ね上がることになります(裏を返せば,きちんと対応すれば400万円以上の節税効果が得られることになります)。

​​ 【おわりに】
 ​ 以上は,敢えて処理を単純にするために設定した例であり,実際には葬儀費用を要したり,土地が借地であったり,別途相続分を当事者で合意したり,子どもが未成年であったり,他の金融資産がある…等と事情は複雑であり,また,これらの事情に応じて法律上の権利関係も税務上の処理も複雑になっていきます。

 ​​ 今回は特に税金の面にフォーカスして説明致しましたが,遺産分割にあたっては,①分割内容の問題②不動産の登記に関する問題③相続税に関する問題といった複数の問題に直面することになります。
 ​ そして,法律事務所にご相談に来られる方は主に①の解決を目的に来所されますが,①を解決したとしても②や③の問題で思わぬ落とし穴がないとも限りません(本来必要のない相続税の負担を強いられることは③のリスクが顕在化したものと言えるでしょう)。

 ​​ それぞれの問題に関し,一般的に①弁護士②司法書士③税理士が専門家として対応していくことになりますが,弊所では所内でいずれの士業とも提携しておりますので,これらの問題に対してワンストップで見落とし無く対処することができます。

 ​​ もし,現在相続や相続税に関してお悩みでしたら弊所までご連絡ください。

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