ネット上で無断転載されたら?著作権侵害について
2022年05月06日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 岩田 雅男
1.無断転載が簡単になった現代
弁護士法人愛知総合法律事務所の弁護士の岩田です。
私の趣味は、読書です。
余暇の時間を使って本をよく読みます。
私自身も文章を作成することを職業としているところですが、我々は依頼者の方々から聞き取った事実を組み合わせて法律上の主張を行うので、ゼロから何かを生み出すということは出来ません。
その意味で、ゼロから何かを生み出している(ように見える)作家の方々のクリエイティブ性には感心するばかりです。
これまで、小説やイラストの創作物の発表できるのは、小説を出版する会社と契約を締結したり、イラストの依頼を日常的に受けたりするいわゆる専業の創作者に限られてきました。
しかしながら、現在は、インターネット上のサービスが発達しており、一般の方々も自由に創作物を発表し、また多くの人々がそれを鑑賞することができるようになりました。
小説だけでも小説家になろうや、カクヨム、pixiv等多くのサービスがありますし、イラストであれば、Twitter、インスタグラム等のSNSでも気軽に投稿ができます。
私自身もカクヨムから出版に至ったSF小説を読んだことがあります。
これらの技術の発展によって創作が簡単に発表できるようになると同時に、創作を無断転載することも簡単になりました。
場合によっては、自分の創作物を宣伝して広めてくれる上に著作権法上適法な引用になることもありますが、著作権を侵害する無断転載にあたる場合もあります。
そこで、今回は、どのような場合が著作権を侵害する無断転載にあたるのか、そのような場合にどのように対処すればよいのかをご説明したいと思います。
2.一般の方々の作品であっても著作権が認められる
一般の方々であっても専業作家であっても、自らが表現した創作物に著作権が発生することには何ら変わりありません。
社会にたくさんの創作物ができること自体は、優れた作品が生まれるきっかけになりますので、著作権法上も広く創作物には著作権を認めています。
3.著作権法上適法な「引用」と違法な「無断転載」の境界線
「引用」については、著作権法32条に定めがありますが、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と抽象的に定められているにすぎず、そもそも、「引用」とは何かが不明確です。
そこで、まず、解釈上の「引用」とは、
①自己の創作である引用部分と他者の創作である引用される部分が明瞭に区別でき、②量から見ても質から見ても、引用部分が主であり引用される部分が従であるという主従関係が認められることとされています。
そのうえで、③出典の明示等の公正な慣行に従っていること、④目的に鑑みて、著作権者の作品が正当な範囲であることという要件を満たしたもの
が正当な範囲の引用といえます。
どんな転載が「引用」で、どんな転載が違法な「無断転載」かはケースバイケースであり、インターネット上まことしやかに語られる「○割にとどまれば適法」といった明確な線引きはありません。
過去の裁判例と比較しての判断が必要になりますので、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。
4.著作権侵害となる無断転載の被害にあってしまったら?
インターネット上のサービスが盛んになっている現代、著作権侵害となる無断転載はインターネット上で行われることが通常です。
そこで、著作権侵害となる無断転載が疑われる被害にあったとしても、投稿者を特定することができず、結局泣き寝入りになってしまうことがあります。
しかし、著作権侵害であっても、その投稿者を特定できる手続があります。
それは、発信者情報開示請求と言われているものです。
これまで発信者情報開示請求の手続はほぼ複数回経る必要があったり、権利の侵害についての裁判所への説明が難しかったり、非常に複雑な仕組みでしたが、1回の手続ができるようになる法改正も予定されています。
泣き寝入りになることは望ましくありませんので、ぜひ気軽にご相談をしていただければと思います。
起訴か不起訴か~検察官の判断とは~
2022年04月27日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 鈴木嘉津哉
1.はじめに
もし、あなたが、何かの事件を起こしてしまったり、交通事故で相手方にけがを負わせてしまったとしたら、その後、逮捕されてしまったり、逮捕はされないまでも、いわゆる書類送検といった手続が取られる可能性があります。そのようなときは、最終的に、検察官が、事件を起こした人(「被疑者」といいます。)について、起訴するか、あるいは不起訴にするかといった処分を決定します。
万が一、自分が被疑者になってしまったら、起訴されるのか、不起訴になるのかというのは、とても気になると思いますが、検察官が、どのようなことを考えて起訴か不起訴かの判断をしているのかというのは、通常は分かりません。
そこで、今回は、元検察官である弁護士の鈴木が、検察官がどのような点を考慮して、起訴か不起訴かを判断しているかということについて、少しだけ触れようと思います。
2.証拠がなければ起訴できない
検察官が、まず、一番気にしているのは、無実の人を間違えて起訴することだけは絶対にしたくない、ということです。このことから、検察官は、警察と一緒になって様々な捜査を行い、その被疑者が、犯罪を行った犯人であるという証拠を集めます。捜査を行った結果、証拠が集まらなければその被疑者を起訴することはできません。
3.証拠があっても起訴しないことのほうが実は多い
皆様は、ニュースなどで、日本の有罪率は99.9%などといったことを聞いたことがあるかもしれません。このような話を聞き、もしかすると、なんとなく事件を起こしたらみんな起訴されるのではないか、そして、有罪になってしまうのではないかなどとイメージされている方もいるかもしれません。
しかし、実は、日本で起きている事件全体を見ると、その半数以上が、不起訴処分となっています。
これは、証拠がなくて不起訴になったという事件も当然あるのですが、その多くは「起訴猶予」といって、様々な事情(「情状」といいます。)から、その人を許し、不起訴処分にするというものです。
4.起訴猶予にするか不起訴にするかの判断基準
事件を起訴猶予にするかどうかというのは、事件によって様々であり、決められた基準というのはないのですが、多くの検察官が気にしているのは
① 事件の悪質性(例えば、1発殴る暴行と10発殴る暴行では、後者の方が悪質)
② 被害結果の重大性(例えば、窃盗などの財産犯では、その被害金額の多さ
③ 被害者がいる事件の場合、被害者の処罰感情
④ 被害弁償がなされていたり、示談がされていたりしているかどうか
⑤ 被疑者が本当に事件を起こしているのだとすれば、自白し、反省しているか否か
⑥ 再犯に及ぶ危険性がないか
⑦ 前科前歴があるか、あるとすればどれくらいあるのか
などといったことです。このような要素を総合的に判断して、起訴するか不起訴にするのかを決めています。
5.弁護士として協力できること
もし、あなたが、被疑者となってしまったり、あなたのご家族が被疑者になってしまったりしたとき、何をすればいいのかすぐには分からないことも多いかと思います。
そのようなときは、最終的な処分の行く末を見通し、どのような手段を講ずればいいのか分かっている(示談の要否やその額、被害者との交渉、身柄拘束からの解放、処分の見通しの説明など)弁護士にご相談いただいた方が、最良の結果が得られる可能性が高くなります。
幸い、弊所には、刑事弁護の経験が豊富な弁護士が多数在籍しており、元検察官も在籍しております。もし、何かお困りのことがございましたら、弁護士法人愛知総合法律事務所まで遠慮なくご相談にいらっしゃってください。
押印した領収書の金額が違う時~二段の推定~
2022年04月07日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 浅野桂市
身に覚えのない領収書が勝手に発行されている、若しくはご自身が署名押印したものの記載されている金額が違うといった経験をしたことはあるでしょうか。
同居している家族や近親者などが勝手にあなたの印鑑を持ち出して捺印しているようなケースや、悪質な相手方が白紙の領収書に勝手に金額を 書き込むといったケースが想定されます。
一般的に、あなたの署名押印がある領収書を相手方が持っている場合、あなたがその領収書の記載通りに相手方から金銭の交付を受けたのだろうと判断されやすくなります。
では、なぜそのように考えられているのでしょうか。
それは、いわゆる「二段の推定」という法律の考え方があるためです。
二段の推定とは
① 文書上の印影が本人の印章によって顕出されたものであるときは、反証の無い限り、その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのが相当である(いわゆる一段目の推定。最判昭39.5.12民集18.5.597)。
これは、自己の印章は厳重に保管・管理し、理由もなく他人に使用させることはないという経験則に基づく事実上の推定です。これにより、『作成者の印章による押印』があるときは、『作成者の意思による押印』がなされたと推定されることになります。
② 民事訴訟法228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、申請に成立したものと推定する。」と規定されているところ、当該規定は、文書に本人の意思に基づく署名押印があることを前提とする規定です。
一段目の推定がなされた場合、民訴法228条4項により、『文書全体の成立の真正』が推定され(法定証拠法則)、領収書の記載どおりにあなたが相手方から金銭の交付を受けたことが推定されるわけです。
① の推定を覆すためには、「印鑑が盗まれたんだ。」あるいは「印鑑を勝手に使われたんだ。」といったことを証拠をもって立証する必要があります。
②の推定を覆すためには、「白紙の領収書で実際とは違うことを相手方が勝手に書き込んだんだ。」といったことを証拠をもって立証する必要があります。
これらの立証のためには、あなたと相手方の関係性、領収書作成時の具体的状況等を踏まえて、当該領収書の不自然性や通帳の記帳内容などを精査して主張を組み立てていく必要があります。
このように、あなたの署名押印がある領収書を相手方が持っている場合、あなたがその領収書の記載通りに相手方から金銭の交付を受けたのだろうと推定されてしまうことから、その推定を覆すことは一定のハードルがあります。とはいえ、弁護士に一度ご相談いただければ、一緒に突破口を探していけるかと思います。
領収書の悪用にお困りの際は弁護士にご相談ください
先日、当職も、依頼者の署名押印がある領収書があるものの、当該領収書は白紙の領収書を悪用されたものであると主張した案件で、無事2段目の推定を覆すことができました。
一度弁護士に相談してみるのが良いでしょう。
ファイル共有ソフト使用で違法アップロードの危険性
近年、ファイル共有ソフトを利用して動画や漫画等をダウンロードしていたところ、警察や著作者から刑事上、民事上の責任を追及されているとして相談にいらっしゃる方が増えています。
その中には、ダウンロードのみならず、アップロードの責任についても問われているというケースがあります。
では、どうしてダウンロードのみを行っていたはずの方が、アップロードの事実についても責任を問われることになるのでしょうか。 その理由はファイル共有ソフトの仕組みにあります。
ファイル共有ソフトの仕組みがいつの間にか違法アップロードに。
ファイル共有ソフトには様々な種類がありますが、大まかな仕組みは以下のとおりです。 (説明の便宜のため、ファイル共有ソフトをインストールした2台のパソコンをそれぞれパソコンA、パソコンBとします。)
①パソコンAの利用者が、ファイル共有ソフトを利用して動画等を検索
②パソコンAのファイル共有ソフトがパソコンBのファイル共有ソフトにアクセス
③パソコンAが検索したデータがパソコンBのファイル共有ソフト内に入っていた場合、パソコンAはパソコンBから同データをダウンロード
パソコンBの利用者はファイル共有ソフトをインストールしているだけで、アップロード操作を行っているわけではありませんが、パソコンAがダウンロードをする反面、自動的にアップロードを行うことになってしまいます。 これが、ファイル共有ソフトを利用しているだけで、自らが違法アップロードを行うことになってしまう要因です。
こうしたケースで自身が加害者となってしまった場合、状況を把握したうえでの対処が不可欠である一方、ファイル共有ソフトの仕組みが複雑であるため、自身がどのような事実でどのような法律に違反しているのかを把握するのは難しい部分もあるかと思います。
警察や著作権者から連絡がきたら弁護士にご相談下さい。
弊所にはこうした事件の実績が豊富な弁護士も在籍しておりますので、具体的な状況を整理して今後の対応をアドバイスさせていただくことが可能です。
「警察や著作権者から連絡がきたが、身に覚えがない。」、「ソフトを使ってはいたが、アップロードをした覚えはない」、「状況が正直よくわからない」等、お困りの場合はぜひ弊所にご相談にいただければと存じます。
医療機関におけるハラスメント(パワハラ・セクハラなど)
2022年03月16日
名古屋丸の内本部事務所
弁護士 木村 環樹
当然のことですが、医療機関(病院・診療所)では、医師、看護師、看護補助者、検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、医療事務など、各種職種の職員が就労しています。このため、職員同士のトラブルが発生することがあり、時にハラスメントに発展することがあります。
ハラスメントの具体的内容、ハラスメントの相談がなされた際の医療機関(使用者)としての対応方法などについては、厚生労働省のホームページで各種指針・パンフレット・リーフレット・研修資料が掲載されています。職員からハラスメントの相談があった場合、医療機関内でハラスメント研修を行いたい場合などには、これら資料を参照すると大変勉強になります。
また、厚生労働省のホームページには、カスタマーハラスメントについてのマニュアル・リーフレット・ポスターも掲載されています。医療機関では、患者から厳しい苦情・指摘を受けることがあります。患者からの苦情・指摘は、医療機関のサービス向上に役立つものではありますが、行き過ぎた苦情はハラスメントに該当することとなります。このような場合の対応方法についても、これら資料を参照すると大変勉強になります。
弊所では、弊所弁護士が医療機関に訪問させていただき、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、カスタマーハラスメントなどについての職員研修を行うことも対応しております。ご要望等ございましたら弊所までお問合せください。また、実際に、医療機関内で発生したハラスメントの対応(加害職員への指導対応、被害職員へのフォロー対応など)についても、相談に乗らせていただいておりますので、お問合せください。