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弁護士コラム Column

大麻で逮捕されたらどうなるのか弁護士が解説

2023年11月06日
伊勢駅前事務所  弁護士 居石 孝男

令和4年警察白書によれば、薬物犯罪として捜査機関に検挙された人数は全薬物事犯が1万3862人であり、その内7824人(56.4%)が覚醒剤事犯、5482人(39.5%)が大麻事犯となっています。

​​今回は、そのような薬物犯罪のうち、大麻犯罪について、ご説明します。

大麻取締法違反で逮捕されるケースと刑罰について

大麻については、「大麻取締法」という法律で規制されています。

⑴ 禁止されている行為

​​大麻取締法では

​ ① 大麻取扱者(都道府県知事の免許を受けた大麻栽培者及び大麻研究者)以外の者が大麻の所持、栽培、譲り受け、譲り渡し、研究のため使用をすること(法第3条)
​② 輸入又は輸出(法4条1項1号)
​③ 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること(法4条1項2号)
​ ④ 大麻から製造された医薬品の施用を受けること(法4条1項3号)
​⑤ 医事若しくは薬事又は自然科学に関する記事を掲載する医薬関係者等向けの新聞又は雑誌により行う場合その他主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、大麻に関する広告を行うこと(法4条1項4号)

などを禁止しています。

⑵ 罰則

​ア 栽培・輸出入に関する罰則   

​​大麻取締法では、大麻の栽培や輸出入に関する罰則として

​​① 大麻をみだりに栽培又は輸出入した者については、7年以下の懲役(法24条1項)
​ ② 営利目的で大麻をみだりに栽培又は輸出入した者については、10年以下の懲役又は10年以下の懲役及び300万円以下の罰金(法24条2項)
​③ 法24条1項又は2項の罪を犯す目的でその予備(いわゆる準備)をした者については3年以下の懲役(法24条の4)
​④ 情を知って、法24条1項又は2項の罪に当たる行為に要する資金、土地、建物、艦船、航空機、車両、設備、機械、器具又は原材料(大麻草の種子を含む。)を提供し、又は運搬した者は、3年以下の懲役(法24条の6)


​​などを定めています。

​​イ 所持・譲受・譲渡に関する罰則

​また、大麻の所持や譲受・譲渡に関する罰則として

​​① 大麻をみだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者については、5年以下の懲役(法24条の2第1項)
​② 営利目的で大麻をみだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、7年以下の懲役又は7年以下の懲役及び200万円以下の罰金(法24条の2第2項)
​③ 第24条の2の罪に当たる大麻の譲渡しと譲受けとの周旋をした者は、2年以下の懲役に処する。


​​などを定めています。

​​​ ウ なお、大麻の使用については、​​

​​法3条1項又は2項の規定に違反する大麻使用について5年以下の懲役が定められていますが、単純な使用については規制の対象外とされています。

⑶ 検挙数

​​令和4年警察白書によれば、令和3年における大麻事犯の検挙人数は総数5482人中、密輸入81人、所持4537人、譲渡273人、譲受198人、栽培230人となっており大多数が所持によって検挙されていることがわかります。

​そこで、大麻所持で逮捕された場合についてご説明したいと思います。

大麻所持で逮捕された後の流れ 

① 警察による取り調べ

大麻所持で逮捕された場合、まずは警察官による取り調べを受けます。

② 検察官送致(身柄送検)

逮捕から48時間以内に検察庁へ送致され、検察官による取り調べを受けることになります。

③ 勾留請求・勾留決定

検察官は、事件の送致を受けてから24時間以内に、裁判所に対し勾留請求をするか否かを判断することとなります。    

​​検察官が勾留請求を行い、裁判所が認めた場合には、勾留初日を1日目として10日間の身体拘束を受けることとなり、その間逮捕された被疑者は取り調べなどを受けることになります。

​​また、10日間で捜査が終了しない場合には、さらに最大10日間勾留が延長される場合があります。    

​​大麻所持で逮捕された場合には、被疑者が大麻の売人へ連絡するなどといった証拠隠滅を防止する必要があることから勾留される可能性が高いと考えられます。

④ 起訴・不起訴の決定

検察官は、捜査が終了した場合、被疑者を起訴するか不起訴とするかを判断します。    

​​大麻所持などの薬物事犯については、再犯防止の観点などから起訴される可能性が高いと考えられますが、令和4年犯罪白書によれば、覚醒剤取締法違反の起訴猶予率が9.2%であるのに対し、大麻取締法違反の起訴猶予率が32.8%と覚醒剤との比較では、起訴猶予とされる可能性が高い傾向にあるようです。

⑤ 公判

起訴された場合、その後も裁判が終了するまでは基本的に身体拘束が続きます。 ​​そして、起訴から1か月前後で裁判の期日があり、その後、判決期日に判決が言い渡されます。    

​​大麻所持の事件で、被疑者が犯行を認めている場合には、基本的に1回の公判で審理を終えることになるでしょう。

大麻所持の場合の判決の見通し

 ⑴ 初犯の場合

自己使用の目的で大麻を所持していたとして逮捕され、捜査の結果起訴された場合、初犯であれば執行猶予付きの判決となる可能性が高いと言われています。

​​執行猶予とは、例えば刑事事件の判決で「被告人を懲役1年に処する。この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。」と言い渡された場合には、3年間の執行猶予期間の間に新たな犯罪を行わなければ、今回言い渡された懲役1年と言う刑罰を受けずに済む一方で、

​​執行猶予期間中に新たな犯罪を行い執行猶予が取り消された場合には、新たに行った犯罪に対する判決が懲役2年であれば、これに執行猶予とされていた懲役1年を加えた合計3年間刑務所に服役することとなる制度です。

​​大麻所持の初犯の場合には、執行猶予判決が言い渡されることで社会内での更正の機会が与えられることになります。

⑵ 再犯の場合

大麻所持の初犯の場合には執行猶予付きの判決となる可能性が高いとご説明しましたが、再犯の場合はどうでしょうか。  
​​この場合、一度執行猶予とは言え有罪判決を受けた中でも再度大麻という違法薬物に手を出してしまったことになりますので、実刑判決の可能性が高いと言わざるを得ません。

​​もっとも、初犯の時期から相当長期間再犯までの期間が経過しているような場合には、執行猶予付きの判決が言い渡される可能性もあるでしょう。

未成年者の場合

未成年者でも大麻を所持していた場合には成人と同様に逮捕されます。 ​​未成年者が逮捕された場合には、逮捕から勾留までの流れは成人と同様です。  

​​もっとも、未成年者の場合、検察官は、捜査が完了した時点で起訴ではなく家庭裁判所に事件を全て送致することになります。  

​​少年鑑別所に送致された場合、身体拘束が続くことになり、原則として2週間、必要があるときはさらに2週間拘束されることになります。 少年鑑別所では、鑑別面接や心理検査などが行われます。  

​​その後、家庭裁判所において少年審判が開かれ、未成年者の更生の観点から少年の処遇を判断することになり、保護観察や少年院送致といった判断がされることになります。

家族が大麻を使用していた場合

⑴ 逮捕される前にわかった場合  

​​日々の生活の中で家族が大麻を使用していることが判明することがあるかもしれません。 そのような場合、ご家族としては大麻をやめるよう説得されるものと思います。

​​もっとも、家族や周囲の人物が大麻をやめるよう説得したとしても必ずしも大麻をやめるとは限りません。

また、発見した大麻を処分した場合には犯罪の証拠を隠滅したとして、その行為自体が犯罪になる可能性も否定できません。

​​さらに、大麻を使用しているのを知りながらやめさせることが出来なかった場合、その後、警察が家宅捜索をした際に大麻が発見された場合、大麻を使用していなかった同居の家族まで、大麻の共同所持などの嫌疑がかかる可能性もあります。

​​そのため、家族が大麻を使用していることが分かった場合には、本人を説得して警察に自首させることが大切です。

​​自首することで逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが捜査機関から見ても低くなりますので、逮捕を避けることが出来る可能性も十分に考えられるところです。

⑵ 逮捕された場合

大麻の所持で逮捕された場合に、家族にできることはどのようなことがあるでしょうか。

​​まず、逮捕されてすぐであれば、弁護士に相談し、弁護活動を依頼することが考えられます。

​​弁護士の具体的な弁護活動については後程ご説明させていただきます。​​それ以外には、警察署ごとに制限や差入れできる物品のルールなどがありますが、金銭や衣類などの差し入れをすることで身体拘束されている本人をサポートすることが可能です。

また、ご家族としては、逮捕された本人が社会復帰した後、家族としてどのようにサポートしていくか考えていくことが大切です。

​​大麻をはじめとした違法薬物は本人の意思だけではやめることができず、再び手を出してしまうことも多い犯罪です。

​​そのため、周囲の家族が、薬物に手を出していないか監督したり、薬物に手を出すような精神状態に置かれていないか日々気にかけて支えていく必要があります。​​また、必要に応じて、薬物依存の治療を医療機関で受けさせるなどのサポートをしていくことも考えられます。

​​このような家族のサポートがあることで、逮捕された本人が大麻をはじめとした違法薬物と縁を切ることが出来る可能性が高まるといえるでしょう。

弁護士による弁護活動

大麻所持は、窃盗や傷害事件のように被害者が存在する犯罪ではありません。

​​このような場合に、弁護士に刑事弁護を依頼するメリットはどのようなものがあるでしょうか。

⑴ 早期の身柄解放

先にご説明したとおり、大麻所持で逮捕された場合には、検察官は勾留請求を行う可能性が高いと考えられ、裁判所も交流を認める可能性が高いと考えられます。

​​もっとも、初犯で本人が大麻所持を素直に認めており、ご家族など身元引受人が居るような場合には、大麻所持の場合でも、勾留決定後、勾留決定に対し準抗告の手続きをすることで、勾留決定が取り消される場合があります。

​​また、勾留決定前であれば、裁判所に対し、勾留の必要性がない旨の意見書を提出することで、勾留そのものを回避することができるかもしれません。  

​​このように、弁護士に依頼することで、捜査段階で早期に身柄解放が実現できるかもしれません。

⑵ 保釈請求

大麻所持で逮捕された被疑者が起訴された場合、原則として裁判が終わるまで釈放されることはありません。  
​​もっとも、起訴後であれば保釈の請求をすることが可能です。  

​​特に大麻所持の初犯の場合には、保釈請求が認められる可能性は十分にあります。 そのため、弁護士に保釈を依頼することで、裁判が終わることを待つことなく身柄解放を目指すことが可能となります。

⑶ 環境調整

先にご家族としてできるサポートについてご説明させていただきました。

​​弁護士に依頼することで、具体的にどのようなサポートが可能であるか、ご家族と共に本人の社会復帰に向けて環境を整えていくことが可能となります。ご家族としても何もわからないなかで社会復帰の環境を整えようとしても難しいと思われますので、弁護士に相談することで具体的なサポート内容などを考えていくことが可能となります。  

​​そして、それら社会復帰後のご家族のサポート内容などを、刑事裁判で主張していくことで、本人の執行猶予の可能性を高めたり、実刑の場合でも刑期を短縮することに繋がります。  

​​もしご家族が大麻で逮捕されるということがあった場合には、まずは早期に弁護士に相談することが大切です。

​​お困りの際にはまずは弊所までご相談ください。

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