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弁護士コラム Column

フレックスタイム制を就業規則に記載する例を解説

2024年12月16日
名古屋丸の内本部事務所  社労士 大内 直子

フレックスタイム制は一定期間内の総労働時間を事前に設定し、その範囲内で従業員が自身の始業、終業時刻を調整できる制度です。この制度により、従業員は生活と仕事のバランスをとりながら効率的に働くことが可能になります。

またフレックスタイム制を導入している多くの企業では、全従業員が必ず勤務する「コアタイム」と自由に出退勤できる「フレキシブルタイム」の2つの時間帯を設けていますが、 これらの設定は必須ではなく、企業ごとに異なります。

フレックスタイム制の導入率が高い業種には「情報通信業」や「金融・保険業」、「電気・ガス・水道業」、「エンジニア」などが挙げられます。個人の裁量で仕事を進められる職種が多いという印象です。

当事務所ではフレックスタイム制などを踏まえた就業規則作成も承っております。全国対応しておりますので、まずは無料相談までお気軽にお尋ねください。詳しくはこちら。

フレックスタイム制度のメリットとデメリット

フレックスタイム制のメリット・デメリットには次のような点が挙げられます。

メリット

ワークライフバランスの両立

従業員が自ら出退勤時刻や1日の労働時間を決定できるため、混雑する通勤時間帯を避けて出社する、子育て中の人や介護が必要な家庭の場合、送迎や介護の時間を確保しやすくなるなどのメリットがあり、家庭と仕事をバランスよくこなすことが可能になります。

残業時間の削減

先に記載の通り、フレックスタイム制は従業員が自身の勤務時間を柔軟に設定できる制度で、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えてもすぐには時間外労働とはなりません。また1日の従業員は1日の労働時間が少なくても直ちに給与額を減額されることはありません。

​​更にフレックスタイム制では、事前に決めた1~3か月の期間内で、繁忙期や閑散期に応じた労働時間の調整できるため、忙しい日は長く働き、余裕がある日は早く帰ることができます。

​​これにより、効率的に時間を使うことができ、残業時間の削減にもつながる可能性があります。

離職率低下や人材確保につながる

多くの人が、育児や介護などのプライベートな理由で、現在の職場を続けたいと願いながらも退職を余儀なくされています。しかしフレックスタイム制を導入すれば、従業員は自身の生活スタイルに合わせて労働時間を調整できるため、仕事を続けやすくなります。

​​フレックスタイム制は従業員の離職を防ぐだけでなく、求人募集においてもワークライフバランスが整っている点が大きな魅力となり、優秀な人材を引き付ける力となるかもしれません。

デメリット

労働時間の管理が煩雑化する

フレックスタイム制では、従業員自身が総労働時間を計画的に管理することが求められますが、事業主もその管理が適切かどうかをチェックし、必要に応じて指導することが大切です。

​​しかしフレックスタイム制は従業員の出退勤時刻がまちまちで、個々の正確な労働時間を管理するのが難しくなる可能性があります。このため事業主には労働時間の適切な管理方法の導入が求められます。

従業員同士のコミュニケーションが不足したり、顧客対応が疎かになる可能性あり

従業員それぞれの勤務時間帯が異なることにより、顔を合わせる機会が減り、連絡を取りたくても相手が不在で困るといったことが起きる可能性があります。例えば、お客様からの問い合わせに対して担当者が不在で対応が遅れるなど、信頼を失うことも懸念されます。

​​多様な勤務時間は従業員間のコミュニケーションや顧客対応に影響を及ぼすこともあるため、導入の際は事前の十分な検討や対策が求められます。

早出や残業の命令が難しくなる。

フレックスタイム制は始業及び終業の時間を労働者の決定に委ねる制度であるため、たとえ急ぎ対応しなければならない事態が発生したとしても事業主はコアタイム以外の時間帯で早出や残業命令を行うことはできません。

​​あくまでも従業員の同意を得た上で、従業員の自発的な意思により早出、残業を行うか否かを決めることが原則的なルールです。 ただ、これでは事業運営や業務に大きな支障が生じることも考えられます。

​​このような場合、事業主は早出や残業を行うべき合理的な理由を告げた上で要請することは認められると解されています。

​​それでもなお就労に同意せず、その結果業務に支障をもたらした従業員については、何らかの対応(たとえば人事評価に反映させる、フレックスタイム制を一時的に解くなど)検討が必要になるのではないでしょうか。

労使協定および就業規則へフレックスタイム制の記載例

はじめに、フレックスタイム制を導入するには、就業規則に必要事項を明示するだけでなく、労使協定の締結も必要ですので、その内容をお伝えします。

​​なお労使協定には次の①~⑤を定めます。

①対象となる従業員の範囲

「全従業員」「営業職員」「役職者のみ」など、具体的にどのような従業員を対象にするのかを明確にします。
​(例)原則、全従業員にフレックスタイム制を適用する。

②清算期間

1~3か月の間で設定できます。また起算日も定めます。

​ (例) 清算期間は1か月とし、毎月1日から末日までとする。

③清算期間における総労働時間

清算期間中に労働すべき総労働時間を記載します。総労働時間は法定労働時間の総枠(*)の範囲内で定めなければなりません。​​(*)清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の歴日数÷7日

​​ (例) 総労働時間は8時間×1か月の所定労働日数 とする。

④1日の標準労働時間

有給休暇を取得した際の賃金の算定基礎となる労働時間を指します。有給休暇を取得した場合は、ここで定めた標準労働時間労働したものとみなされます。

​​ (例)1日の標準労働時間は8時間とする。

⑤コアタイムとフレキシブルタイムの設定 (任意)

コアタイムとは全ての従業員が必ず勤務すべき時間帯を、フレキシブルタイムとは個々の従業員が自由に出退勤できる時間帯を指します。なお規定は任意ですので、法律上明記の義務はありません。

​​ (例)​コアタイムは次の通りとする。 10:00~15:00    
​フレキシブルタイムは次の通りとする。
​ 始業時間帯  6:00~10:00
​ 終業時間帯  15:00~19:00

次に、就業規則へは労使協定に定めた内容と同様の内容を記載することで足りますが、例えば次のように労使協定と関連付けた記載をするとスッキリとしていて分かりやすい規定になります。

​​(例)会社は次の項目を定めた労使協定を締結し、その従業員にかかる始業、終業時刻は各従業員の決定に委ねる。

​ イ)対象となる従業員の範囲
​ロ)清算期間
​ ハ)清算期間における総労働時間
​二)1日の標準労働時間
​ ホ)コアタイム・フレキシブルタイムを定める場合にはその始業・終業時刻

最後に労使協定に定めのない事項で(例えばフレックスタイム制の適用がふさわしくない従業員の対応など)、必要と思われる内容がある場合は、就業規則に忘れずに盛り込みましょう。

労使協定の締結方法

フレックスタイム制を導入するには労使協定の締結が必須です。なお清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の場合は、労働基準監督署へ協定の届出が不可欠です。ご注意下さい。

① はじめに従業員代表を選出します(事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がない場合)代表者の選出は民主的な方法により、事業場ごとに行いましょう。

​② 次に、選出された従業員代表等と協定の内容を協議の上、労使協定を締結します。

​③ 締結後は従業員への周知(書面の交付、掲示などの他、従業員がすぐに閲覧できる状態にする)も忘れずに行いましょう

コアタイムの設定と不要なケース

コアタイムとは、全従業員が必ず勤務しなければならない時間帯を指しますが、勤務時間を完全に従業員の裁量に任せる場合はコアタイムの設定は必要ありません。

​​コアタイムなしの制度は、従業員の自由度が増し、その結果ストレスが軽減され、より高いパフォーマンスの発揮が期待できます。

​​しかし、完全に自由化してしまうと従業員間のコミュニケーションが希薄になる、顧客対応がスムーズに進まないなどのデメリットも考えられるため、コアタイム設定をするかどうかについては、慎重な判断が求められます。

フレックスタイム制へ従業員の理解と周知

フレックスタイム制は職種や仕事内容によって適用の向き不向きがあるため、すべての従業員に適用できないことがあります。ただこの場合、適用されない従業員から不満が出ることも考えられます。

​​そこで、会社は適用されない全ての従業員に対し、フレックスタイム制の制度そのものについて、導入の経緯、フレックスタイム制の必要性やデメリットなど、あらゆる事項について透明性を持って説明し、理解を得ることが不可欠です。

問題が発生した場合の対応方法

フレックスタイム制を悪用し、夜や朝ばかり出勤する、上司が不在の時間を狙って出勤するといった従業員が増えること懸念されます。こうしたフレックスタイム制の悪用を防ぐためには、まずその制度の目的を全員が理解することが重要です。従業員が制度を正しく利用し、会社の導入目的と一致して働けるよう、以下のルールを検討しましょう。

① コアタイムの設定

勤務しなければならない時間帯(コアタイム)を設定することで朝だけ夜だけといった偏った出勤をなくすことができます。

② 各人の出退勤の予定時間を周知

各従業員の出勤および退勤予定を社内システムや予定表のボードに数日分記載しておくことで、顧客対処や報告、連絡、相談がスムーズになります。

③ルーズな社員へ評価の減点や処分の検討

勤怠がルーズな従業員は、顧客や他の従業員に迷惑を掛ける可能性があります。そのため、コアタイムを設け、その時間を守れない場合は遅刻や早退として給与からの控除を行うことを検討して下さい。それでも改善が見られない場合には、指導や人事考課での低評価等を検討することも有効かもしれません。

フレックスタイム制の定期的な見直し

フレックスタイム制を導入後、しばらく経つと予期しない問題や改善すべき点が見えてくることがあります。そのため、コアタイムやフレキシブルタイム、対象となる従業員の範囲などを定期的に見直し、自社に最適なルールを構築していきましょう。

労働基準法の法的要件と36協定

フレックスタイム制においても、時間外労働の上限規制は適用されます。そのため、実労働時間が清算期間内の法定労働時間の総枠を超える場合は36協定の締結が必要です。  またフレックスタイム制のもとで、勤務した休日労働(週に1回の法定休日に労働すること)は清算期間における総労働時間や時間外労働には含まれず、別で扱われますので注意が必要です。

社労士に依頼するメリット

フレックスタイム制の導入には事前の準備や労使協定の締結、就業規則への記載、労務管理の問題など多くの対応が必要ですが、これら全てを一から対応するのは容易ではありません。  

​​そこで、労務管理・就業規則の専門家である社会保険労務士に作成や管理の依頼をしてみてはいかがでしょうか。

​​ 社会保険労務士に依頼することで、法律に基づく適切な就業規則や労使協定の書式を作成できるだけでなく、法令違反のリスクを低減することもできます。 まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

大内 直子

社労士

大内 直子(おおうち なおこ)プロフィール詳細はこちら

名古屋丸の内本部事務所

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