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弁護士コラム Column

愛人の子どもや隠し子は相続できるの?弁護士が解説

2024年04月15日
名古屋藤が丘事務所  弁護士 浅野 桂市

愛人の子との相続問題

父親が認知した場合の愛人の子の相続権

父親の死後、母親(配偶者)や子らにおいて、遺産分割手続をする必要があります。 そうした時、まずは父親の戸籍(出生から死亡までの戸籍謄本)を取得する必要があります。

​​父親の戸籍をとってみたら知らない人が子として記載されていたということが稀にあります。戸籍に記載されているということは父親によって生前に認知をされていたということになります。

この場合、母親(配偶者)や子ら(嫡出子)だけではなく、認知をされていた者も嫡出子である子らと同様に扱い、遺産分割協議をする必要があります。

​ なぜなら、民法上、当該認知をされていた者は非嫡出子ではあるものの、嫡出子と同様に相続人になるとされているからです。

ここで、「嫡出子・非嫡出子」と「認知」という法律用語が出てきたので、まずはこれらの言葉の意味について説明します。

​​「嫡出子」とは、「婚姻中の夫婦の間に生まれた子供」をいい、これに対して、婚姻中でない男女の間に生まれた子供を「非嫡出子」といいます(民法772条1項。なお、厳密には婚姻中でない夫婦の間の子であっても嫡出子にあたる場合もありますが、便宜上ここでは割愛します)。

「認知」とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、その父または母が自分の子であると認め、法律上の親子関係を発生させることをいい、民法779条に規定されています。

認知している場合の遺産分割について

上記のとおり、認知された子は相続権を有するため、認知された子を交えて遺産分割協議をする必要があります。

ここで、認知された子の相続分は、嫡出子と同じであると解されています。

​​かつては、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1と規定されていましたが、平成25年に当該規定は違憲であるとの決定(最大決平25・9・4民集67・6・1320)が示され、当該規定は法改正により削除されています。

認知されてない場合の遺産分割について

認知されていない愛人の子は、相続権を有しないため、相続人とはならず、当該愛人の子を交えて遺産分割協議をする必要はありません。

ただし、父親の戸籍に載っていないからといって100%大丈夫というわけではありません。

認知の方法には、上述した父親による生前の認知(役所への届け出)のほかに、①遺言による認知、②認知の訴え(死後認知)があります。

①遺言による認知は、父親が遺言によって愛人の子を認知することです(民法781条2項)。
​ ②認知の訴え(死後認知)は、愛人の子が父親の死後に、父親との間に父子関係を求めて、認知請求という訴訟を提起することをいいます(民法787条)。家庭裁判所が認めた場合に父子関係が認められることになります。

この認知の訴えは、父親の死亡日から3年を経過した場合には訴えを提起することはできなくなる点に注意が必要です(同条ただし書)。

​​もっとも、過去の判例で、父親の死後3年を経過した後であっても例外的に審理に付させることを相当とした判例があります(最判昭57・3・19民集36・3・432)

立場を変えて話すと、あなたが愛人の子としての立場であるものの父親の生前に認知がなされていない場合、父親の相続権を主張するには、速やかに認知の訴えを提起する必要があります。

​​認知の訴えは、高度に専門的な訴訟になるため、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

遺産分割協議後に隠し子が判明した場合

当該隠し子が相続人の地位にある場合には、当該隠し子を交えずにした遺産分割協議は無効となります最判昭和54・3・23民集33・2・294)。

​​そのため、当該隠し子を交えて再度遺産分割協議をする必要があります。

もっとも、相続開始後認知によって相続人となった隠し子が遺産の分割を請求しようとする場合で、ほかの相続人が既に不動産等を売却してしまっていた場合には、価額のみによる支払の請求権を有するという規定があります(民法910条)。

​​すなわち、この場合、死後認知を受けた隠し子は金銭請求のみしうるというわけであり、売却済みの不動産を取り戻す必要まではないというわけです。

隠し子に相続させたくない場合どうしたらいい?

隠し子がいるか調べる方法は?

これまで述べてきたとおり、戸籍を調査する必要があります。加えて、遺言書があるかどうか、調査をする必要があります。そのほか、父親の交友関係を調査して愛人がいた形跡がないか調べることも考えられます。

父親の立場で、隠し子に相続させたくない場合は、遺言書を作成し、遺産の分割に備えることが考えられます。
​生前に遺言を作成し、隠し子ではない実子に相続させる旨記載しておくわけです。

​​ただし、この場合でも、隠し子には遺留分がある点に注意が必要です。

弁護士への依頼するメリット

①あなたが隠し子がいる父親の場合、自身の死後実子と隠し子との間で争いにならないよう、遺言を作成しておくことが重要です。

②あなたが被相続人である父親の実子あるいは配偶者である場合で、戸籍調査の結果、父親に隠し子がいると判明した場合、当該隠し子とも話し合いをする必要があります。しかし、これまで会ったことも話したこともない人と遺産分割の話し合いをすることはとても大変です。

③あなたが隠し子の立場である場合、父親の財産を相続するには、実子や配偶者と話し合いをする必要があります。さらには生前に認知をされていなかった場合には、認知の訴えを提起する必要があります。
​​また、実子にすべての財産を相続させる旨の遺言があった場合には、遺留分の請求を行うことも考えられます。

いずれの場合でも、高度に専門的な話となるうえ、話し合いの負担は大きいものと考えられます。

​​専門家である弁護士の助言を仰ぐことを強くお勧めします。 弊所所属の弁護士は、相続問題について、多数の経験を有しております。 まずは一度ご相談ください。

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