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弁護士コラム Column

時効のことあれこれ

2016年02月15日
名古屋丸の内本部事務所 弁護士 柄夛 貞介

当事務所の無料電話相談を担当していたとき、相談者の1人から「借金を踏み倒すにはどんな方法がありますか。」と直裁に聞かれて、何とまあ言いにくいことをはっきり聞く人がいるものだなと思ったものです。「言うまでもなく借りたものは返さないといけませんが、一体どういう債務を踏み倒すというのですか。」と聞いてみたら、「借金はいろいろありますが、今簡易裁判所に訴訟を起こされているのは、平成8年頃に貸金業者から借りた債務です。平成10年ころまでは利息と元金一部を払っていたのですが、その後は催促もなく全く支払っていなかったのです。それが、今頃になって、借りた金の何倍もの遅延損害金を含めて支払えという訴状が届いてびっくりしているのです。」ということでした。その相談者は、その債務を含め借金全部をとても支払える状況にはないと言うことから、債務を免れる究極の方法は破産しかないが、養育費も滞っているというので、それは、破産によっても免責されませんから最優先で払わなければいけませんよと伝えました。しかし、破産しないまでも、訴訟を起こされている貸金債務は最終弁済期日ないし最後の弁済日から10年で時効にかかります。ただ、時効期間が経過していてもあくまでも借りた金は返すのが人の道だという人もいますので、時効の利益を受ける(債務を消滅させる)ためには、債務者が消滅時効を「援用する」ということを裁判所や債権者に伝えなければならないことになっています。
つまり、裁判所は債務者が裁判で時効を援用するといわなければ勝手に債務が消えているという判決をすることはできないのです。しかし、そういうことを知らない人が結構いるのです。
そこで、悪質な業者は、そういう債権を安く買いたたいて全国各地に散在する借り主を相手に合意管轄の約定のあることを利用し、自分の事務所のある裁判所に大量に裁判を起こし、遠方にいる債務者は裁判所に出頭もできず、時効を援用するという内容の答弁書も無知のため出さないため、欠席判決などで元本の数倍の延滞利息まで払わなければならない判決が出され、強制執行を受けると云う実情があるようです。こうなると簡易裁判所は、悪質貸金業者の債権回収のための下請け機関化しているともいえることになります。こうした実情に対し、義憤にかられた勇気ある名古屋や大阪の簡易裁判所の裁判官の中には、業者事件については、裁判所に出頭した債務者には勿論、債務を認める答弁書を出して欠席した債務者に対しても時効制度を詳細に説明し、或いは説明書面を送って、時効の援用をするのか検討するように努めている裁判官も現れています。しかし、一方の当事者に有利になるようなことを教えることは、中立公平であるべき裁判所のするべきことではないとか、大量の事件処理をしている簡易裁判所でそんな丁寧な説明をすることは事務量をいたずらに増やすことだとして非協力的な裁判所職員も多く、こういう裁判官は孤立しがちな状況にあります。様々な障害を乗り越え無知に乗じて悪質業者から高利の利息を取られる市民を守ろうとする裁判官は宝とはいえないでしょうか。
借りた金を返さない債務者も悪いのですが、返済期日が来ても、10年以上も放置して延滞利息を何倍にも膨らませ法律の無知に乗じて裁判を起こして取ろうとする業者も悪いでしょう。でも、どっちがどれだけ悪いのでしょうかね。考えさせられます。

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