専業主婦の離婚で知っておくべき財産分与の考え方・割合

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弁護士コラム Column

専業主婦の離婚で知っておくべき財産分与の考え方

2022年09月12日
名古屋丸の内本部事務所 

専業主婦の財産分与の考え方

夫婦が離婚する際に決めなければならない重要な問題として、財産分与が挙げられます。特に専業主婦の方にとっては、分与される財産が離婚後の生活資金・基盤になるケースが多いです。

​​以下では、夫が就労し、妻が専業主婦をしているケースを念頭に考えます。

​​この点、専業主婦の方は、労働による収入・給与を得ていません。しかし、家事などを担当して、夫・家族の生活の維持(ひいては夫の収入確保)に貢献していると考えられます。そのため、夫の収入でなく、夫の収入を原資として取得した夫名義の貯蓄・保険などの資産形成に対しても、専業主婦は間接的に貢献をしていると考えられ、これらは財産分与の対象(夫婦共有財産)と扱われます。

​​その分与の割合も、夫・妻で等分する(1/2ずつ分与する)のが原則です。

財産分与の割合が修正される場合

以上はあくまで原則であって、最終的な分与割合は個別のご夫婦の状況に照らして判断されます。

​​専業主婦の方に限った問題ではありませんが、妻の分与割合が少なくなるような例として、夫が特殊な才覚によって極めて高額の収入を得ていた場合(夫婦共有財産への夫の貢献が大きい場合)があります。

このようなケースの典型例として、夫が医師・弁護士・経営者などである場合は挙げられますが、形式的に夫の職業のみに着目するのは不正確です。

​​あくまで、法的に重要なポイントは「夫婦共有財産の形成に、夫・妻の双方がどれだけ貢献したか」という点です。

​​そして、この貢献は単に夫が従事していた職業だけでは判断できず、「夫の特別な貢献によって一般的な水準を大きく超える夫婦共有財産が形成されているか」という点からも検討しなければなりません。

夫の貢献を大きく評価した過去の事例を見ても、夫婦共有財産が数億円(規模が大きい事例だと数百億円)を超える場合など、通常の所得水準を大きく上回っている事例が多いように思われます。

専業主婦の方が財産分与で見落としてはいけないポイント

さて、以上は分与の割合についてご説明しましたが、そもそも何を分与するか(何が夫婦共有財産として扱われるか)という点も重要なポイントです。

​​現金・預金・不動産など有形物はすぐに思いつくところです。ただ、夫婦共有財産であれば無形物であってもかまいません。

​​夫名義の保険解約返戻金・退職金債権などの債権は、無形物でともすれば失念されがちですが、婚姻期間によっては高額な資産価値を持つ場合がありますので、忘れずに考慮する必要があります

ただし、夫婦が比較的若年での離婚の場合、将来夫が退職時に本当に退職金を受け取ることができるかは不透明な点があります。

​​例えば、夫が何らかの理由により懲戒解雇されたり、勤務先が倒産したりした場合は退職金をうけることができません。このような不確実性を含む財産は、将来において実際に金銭を受け取る確実性・可能性があるかという点も問題となります。

​​退職金について言えば、勤務先の性質、支給根拠の有無などが問題となり得ます。この点については、過去の離婚実務と現在の離婚実務でも考え方が変わってきているところですので、最新の実務を踏まえた上で、個別に検討する必要が高いと言えます。

扶養的財産分与

さて、以上はいわゆる清算的財産分与の考え方を前提としたお話しでした。

​​清算的財産分与とは、離婚により夫婦関係が終了することに伴い、それまでに夫婦で形成した夫婦共有財産を清算するという考え方です。​​この考え方によれば、何が夫婦共有財産か、その形成にどの程度貢献したかという点が主たる問題点となります。

​​ 一方で、財産分与には扶養的要素もあると考えられています。扶養的要素とは、離婚後における当事者の生計の維持を目的とするもので、ここで問題となるのは離婚後の夫婦の生活、各自の就労能力・保有資産額などが問題となります。

特に専業主婦の方の場合、もともとは就労していたものの家庭の事情で退職した方も多く、退職後長期間にわたって就労実績がないと思うように再就職できない場合もあると思われます。扶養的財産分与は、このようなキャリアブレイクに対する補償としての意味合いもあると考えられています。

扶養的財産分与を強調することに消極的な見解もありますが、元配偶者の財産状況、生活状況等、及び扶養義務を負う当事者の収入や財産状況等を考慮して、夫婦の平等を実現するために必要な額を検討する考え方もあるため、婚姻中の収入関係だけでなく、離婚後に予定される当事者双方の生活方法・稼働能力を具体的な根拠に基づいて主張する必要があります。

さらにいえば、扶養的財産分与を実現する方法も様々です。

​​離婚後の一方当事者の生活費を他方当事者が一定額補償する場合もありますし、離婚後の一方当事者が速やかに自立・就業できるよう、研修費用・就学費用を援助する方法や、別居に要する費用を補償したり自己所有の不動産に一定期間無償で居住することを認めたりする方法で支援することも考えられます。

年金分割

また、専業主婦の方が忘れてはいけない制度として年金分割が挙げられます。

​​年金分割とは、離婚した場合に、お二人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。

​​夫が厚生年金に加入していることなど一定の要件が必要ですが、特に熟年離婚の場合は年金分割により高額な経済的補償を受けられる可能性もあるため、専業主婦の方にとっては重要な手続です。

もっとも、年金分割制度も注意すべき点があります。よくある誤解としては、将来夫が受給する年金を半分分与してもらえるというものがあります。

​​年金分割は、支給額を分割する手続ではなく、厚生年金額を算定する基礎となる報酬額(今まで厚生年金保険料を支払ってきた実績)を分与するものであり、実際に支給される年金額は当事者それぞれの過去の納付実績にてらして算定されます。

​​年金の半額をもらえるという前提で安易に離婚後の生活設計すると、年金支給額が思いかけず低かったという場合もあり得ますので、慎重な検討が必要です。

また、年金分割は離婚したら当然に認められるものではありません。

​​離婚後、年金事務所での手続が必要ですし、原則として離婚から2年以内手続を行う必要があります。この期間制限は厳格な規制であり、この期間を徒過すると離婚しても年金分割が一切認められない場合もありえます。

最後に

本ブログ記事では、専業主婦の方を念頭に財産分与において気をつけるべきポイントを記載しました。財産分与だけでも多くの検討点・注意点があることをご理解いただけたかと思います。

​​もっとも、実際の離婚協議はさらに複雑です。財産分与の問題のほか、そもそも離婚を実現できるか否か、離婚成立前の婚姻費用など付随する問題点は多いため、単純に財産分与のことのみを考える方針を決めることはできません。

​​離婚の早期実現・公平な財産分与・離婚後の生活水準など、様々な問題を整理して方針を決定していくことが重要になります。

​​愛知総合法律事務所では年間に何件も離婚事件の解決している弁護士が多数在籍しています。

​​この経験を活かし、依頼者様にとって何が最も利益のある・妥当な解決なのか、その解決を実現するためにはどのような手段によるべきかなど助言させていただきます。離婚問題は事前準備が重要ですので、離婚しようか悩まれた際はぜひ早期にご相談いただければと思います。

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