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弁護士コラム Column

ビットトレントの開示請求と損害賠償請求の仕組みを弁護士が解説

2024年06月20日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 岩田 雅男

はじめに

​​ 弁護士法人愛知総合法律事務所の弁護士の岩田です。

弁護士法人愛知総合法律事務所では、ビットトレントというインターネット上のサービスに関連する法律相談、事件の対応をさせていただいております。

ビットトレントが問題になる法律相談はこのようなものです。

 「少し前に、インターネット上でビットトレントというサービスを使って、漫画やアダルトビデオを視聴していたら、突然、漫画やアダルトビデオの著作権者を名乗る会社から、発信者の情報開示請求がされてしまった。 その連絡も放置していたら、さらに、損害賠償を請求する手紙が届いてしまった。どうすればよいでしょうか。」

この記事を読まれている方の中にもこのようなお悩みがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ビットトレントは、インターネット上でファイルを共有する便利なサービスです。一方で、違法に漫画やアダルトビデオ等のコンテンツの著作権を侵害することも簡単にできてしまうため、著作権者からの発信者情報開示請求、損害賠償請求をされることも多くなっています。

今回は、ビットトレントのサービスを使うとなぜ違法になってしまうのか、そのような連絡が来たときの対処法等をお伝えできればと思います。

ビットトレントと開示請求の概要

ビットトレントとは、インターネット上でファイルを共有することができるソフトウェアです。 専門的には、ピアトゥーピア(Peer to peer)という技術を使ったソフトで、これは要するにそれぞれのコンピュータ同士が、上下の区別なく対等に通信を行う技術を用いています。

​​ ビットトレントは、この対等なコンピュータによる通信を使って、動画や音声などのファイルを、ダウンロードしながら、同時に同じファイルをアップロードを行うことにより、高速にファイルをダウンロートしたりアップロードをしたりすることができます。

​​ 仕組みをきちんと説明するとより複雑になってしまいますが、

​​要は、「ダウンロードのみしているつもりが、同時にアップロードしてしまっている」という点が最も重要です。 つまり、ビットトレントというサービスは、単にダウンロードのみをしているわけではないということです。

日本の著作権法では、著作物を違法にダウンロードすることもアップロードすることもいずれも禁止されており、これに違反すると刑事罰が下されます。

​​ また、刑事責任とは別に、その著作物を違法にダウンロード・アップロードされたことによって売上が低下するなどの損害が発生しているため、この損害については、民事上の損害賠償責任を負うことになります。

​​ 特に、私的に行うダウンロードはなかなか発覚しにくいのですが、アップロードについては、 インターネット上にアップロードをしていることが全世界に公開されてしまいます。

​​ 問題になる事例は、ビットトレントという便利なサービスを使って、ファイルをダウンロードしていたつもりが、同時にアップロードもしてしまっており、著作権者にそれが発覚してしまい、発信者情報開示請求をされてしまった、損害賠償請求をされてしまった、刑事告訴をされてしまったというものです。

発信者情報開示された時の対応の流れ(プロバイダの対応、意見照会書に同意する、同意しない場合等)

私たちの通信は、スマートフォンやパソコン等の通信機器を通して行うことになりますが、それぞれの通信は、どの通信機器によって行われたのか記録がなされます。

​​ そして、それぞれの通信機器は、例えばドコモやソフトバンクなどの、通信業者(プロバイダ)が提供しているサービスを使っており、ドコモやソフトバンクなどの通信業者は、その通信機器を使用する契約者の氏名や住所の情報を所持しています。

​​ したがって、ビットトレントへの接続情報の開示請求を行うと、通信業者が分かり、通信業者が分かると、その通信を使った契約者の住所・氏名等の情報が発覚してしまうのです。

​​ そこで、著作権者は、自らの著作物が違法にアップロードされていることを知ると、​①ビットトレント→②通信業者→③通信業者の契約者の順番で照会を行うことで、誰がアップロードしたのかほぼ特定することが可能なのです。

そして、現在の運用では、②に対して照会がかかった時点で、通信業者は、自分の契約者に対して意見照会を行うことになっています。

​​ 意見照会書には、「開示に同意をするか」という質問と、「何か言い分はあるか」という質問が含まれており、これに自分で記入を行い、業者に対して返送をすることになります。

​​ 同意しないと回答した場合は、プロバイダは開示しないという主張を行い、同意すると回答した場合には、そのまま任意に開示をすることになることが多いです。

​​仮に同意をしないと回答した場合でも権利を侵害していることが明らかである場合には、裁判所により開示が命じられてしまう可能性があります。

​​ 特に、ビットトレントによるダウンロード・アップロード行為自体は、著作権を侵害していることは明らかである場合が多いので、本当にご自身でダウンロード・アップロードをしているのであれば、権利侵害がないということはほぼできないといってよいと思います。

​​ とはいえ、例えば身に覚えのない開示請求であった場合や、そもそも誤って意見照会がなされてしまうこともあり得ます。

​​まずは、この意見照会がなされた時点で、その書面を持って弁護士にご相談をいただくのがよいと思います。

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開示請求を無視した場合はどうなる?

開示請求の際の意見照会の手続は、仮に無視をしてもそのまま進みます。 しかし、そのまま無視をした場合には、特に発信者からは、否定する意見は提出されなかったという前提で、手続が進みます。

​​このような場合でも通信業者は、通信の秘密を守るため、開示を拒む主張は行ってくれますが、特にビットトレントの場合には、裁判所により開示がなされてしまう可能性も多いと思います。

開示請求を拒否すると逮捕される?

開示請求を拒否したからといってただちに逮捕されてしまうわけではありませんが、一方で、反省の機会を示すことができたのに、反省が示されなかったとして、著作権者の反感を買ってしまうことがあります。

​​このような場合に、著作権者が刑事告訴を行う可能性は否定できません。 できるかぎり誠実に対応をすることが必要です。

身に覚えがない開示請求の確認方法

中には身に覚えがない開示請求がなされることもあります。 例えば家族で共有して通信機器を使っていた場合でも開示請求はその通信機器の契約者に対して行われますから、自分には身に覚えがなくても家族がアクセスしているという可能性はあります。

​​ また、さらに悪質なケースでは、他人の住居で通信機器を使って、アクセスを行うということも考えられます。 このような場合には、パスワードが漏れてしまった可能性を主張したり、アクセスをしたとされる時間帯に、別の予定に行っていたことを主張したりすることで、自身が関与していないことを立証できる可能性があります。

身に覚えのある場合の対応

一方で、確かに、ダウンロード・アップロードをしてしまっているという場合には、誠実な対応が必要です。

著作権侵害の認識と開示請求

ビットトレントは、かなり複雑な仕組みのソフトウェアであり、「ダウンロードをして自分だけで楽しむつもりだった」という認識であっても、知らず知らずのうちに違法アップロードにも加担してしまったというケースが起きてしまいます。

​​ そんなサービスだとは知らなかったといいたいところですが、このようなケースであっても権利を侵害していることは事実なのですから、責任を否定することはできません。

​​ そして、損害額としても、アップロードを行った方がはるかに損害額が大きいです

​​ ダウンロードによる損害は、購入するためのお金を支払っていないのに、ダウンロードをしてしまったという内容ですが、アップロードをすると、他人も購入しなくても動画や音声を再生できてしまうからです。

侵害行為の判断とその後の対応

先に述べたように、日本の法律は、ダウンロード・アップロードのいずれも禁止しており、刑事罰が下されますが、現実に具体的に侵害行為が特定できるのはアップロードの方が多いです。

​​ したがって、アップロード行為を捉えて、侵害行為と判断することになります。 その後は、特定した発信者の情報に基づいて損害賠償請求・刑事告訴などがなされます。

法律的手段と和解・早期解決の選択

発信者の情報開示請求がなされて以降は、通常の紛争と同様に示談ができれば示談で終了し、決裂してしまえば、訴訟提起がなされることになってしまいます。

​​ 訴訟提起がなされてしまうと、裁判所を経由して、書類がご自宅等に届き、家族にも発覚してしまうことになります。

​​ビットトレントを使ったダウンロード・アップロードは、特にアダルトビデオなどのファイルが多いため、特に家族には知られたくない情報だと思います。 そのような事態に至る前に早期に示談をすることが賢明です。

ビットトレント開示請求での弁護士の対応

まず、

​​①家族に知られないままに示談を締結することが可能という点です。

​​ 発信者情報開示請求は、専門的であるため、著作権者も弁護士に依頼をして対応をしています。 したがって、こちらも弁護士をつけると、お互いに弁護士を挟んで対応をすることになります。

​​ 日本の弁護士内のルールには、相手方に弁護士が就任した場合には、相手方本人に連絡をしてはならないというものがあります。

​​つまり、こちらも弁護士をつけたことを説明すれば、今後の文書送付の窓口や電話連絡の窓口を弁護士にすることも可能なのです。

​​ 弁護士に示談の締結までご依頼をいただければ、最終の示談書の取交しまで、弁護士を窓口として行うことが可能です。

​​ また、弁護士に依頼をすれば、

​​​②減額の交渉や盛り込みたい条件など示談の条件を調整することも可能です。

​​ 著作権者は、交渉の最初では、駆け引きもあるため、できるだけ多くの損害額を主張し、多額の損害賠償請求を行うことがあります。

​​ 例えばアダルトビデオの損害賠償請求にあたっては、アダルトビデオはDVDを購入する場合と、配信でデータを入手する場合があるのですが、それぞれ単価が異なります。
​​著作権者はできるだけ多くの損害額を請求するために、単価が高い方を基準に損害の算定を行うことがあります。

​​ このような場合には、弁護士から根拠のある反論を行うことで減額の調整を行うことが可能です。

開示請求へ対応した事例

弊所では、ビットトレントを使ってダウンロード・アップロードをしてしまった場合に、家族に知られることのないまま、減額の交渉やその他の条件を調整したケースが複数件ございます。 ぜひ、不安な点をご相談いただければと思います。

複数のトレント関連開示請求の問題点と示談交渉

ケースによっては、ビットトレントを使って複数のファイルをダウンロード・アップロードしていることも多いです。 このような場合であっても、著作権者はまず発見した順番にアップロード行為についての発信者の情報を開示請求します。

​​そうすると、示談交渉がはじまって以降も実は他にも同じ著作権者のファイルをダウンロード・アップロードしてしまっているがどうしたらよいのか、いつまでも損害賠償請求が終わらないのではないかと不安になることがあると思います。

示談交渉の流れと注意点

このような場合は、

​①予め他にも権利侵害があることを伝えつつ、
​②全ての権利侵害を含めて示談をする


​​という方法がよいと思います。

​​ ①についてはまだ相手にも知られていない情報をこちらから認めることに抵抗があるかもしれませんが、今後もアップロード行為が発覚するたびに発信者情報開示請求が行われることに怯えてしまう日々が続くよりは、よいのではないでしょうか。

​​ ②また、示談書には、清算条項という条件を設けることができます。
​​これは、「これ以上、お互いに言い合いっこはなしで、追加で何か請求することはしない」という内容の条項です。 これを設けることで、全てのアップロード行為についての条件をまとめることができます。

​​ 一般には、著作権者からは、弁護士をつけない状態だと、
​​「今後新たに侵害行為が発覚した場合には別途誠実に協議をする」などの条件を突きつけられることもあります。

​​このような場合であっても弁護士を介入させれば、全てのアップロード行為について解決をすることも可能です。

​​ 一般に、発信者情報開示請求も、相手方にとっては労力と費用がかかることなので、アップロード行為が発覚するたびに、毎度手続をとるよりは、一挙に解決することには相手方にもメリットがあります。

​​清算条項を設けることで双方にメリットのある示談をすることができます。

終わりに

ビットトレントは便利なサービスである一方、複雑な仕組みではあるので、知らず知らずのうちに犯罪や違法行為に手を染めてしまうこともあります。

​​ また、著作権者が違法アップロードを知った場合には、発信者情報開示請求や損害賠償請求を行うことになり、定期的に発信者に対して、通信業者、裁判所や弁護士などから次々に書面が届いてしまうことになります。

​​ 確かに違法アップロードは犯罪であり違法な行為ですが、行ってしまった以上の社会的制裁や法的制裁を受ける必要はありません。 制裁を拡大させないためにも、専門家である弁護士にぜひご相談・ご依頼をいただきたいです。

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