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弁護士コラム Column

傷害事件で示談しないとどうなる?弁護士が解説

2024年04月03日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 藤村 衛

はじめに

被害者が存在する刑事事件では,薬物利用など基本的に被害者がいない事件と異なり,被害者との示談交渉が重要な意味を持ちます。

​​ここでは,特に第三者に傷害を負わせてしまった傷害事件について,加害者側が被害者との示談交渉を行う重要性について紹介していきます。

傷害事件で示談しなかった場合の可能性

傷害罪と示談に応じない場合のリスク

前提として,傷害罪とは,人の身体を傷害した行為に成立する犯罪であり,刑法204条に規定されています。

​​また,「傷害」とは,「他人の生命の生理的機能を毀損するもの」と定義されており,相手に怪我や外傷を与える行為だけでなく,PTSDなど精神的なダメージを負わせる行為も含まれます。傷害罪を犯した者には,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される旨が規定されています。

また,刑事事件における示談とは,加害者側と被害者側で直接交渉を行い,争いを解決することを言います。

​​傷害事件における示談の内容は,一般に,加害者側が自身の傷害行為を認めた上で,被害者に謝罪や発生した治療費や精神的な損害に金銭的な賠償をします。

被害者側と早期に示談が出来た場合には,被害者が警察への被害届の提出をせず,刑事事件に至らずに解決できる可能性もあります。

​​また,既に刑事事件となっている,あるいは結果として刑事事件となってしまった場合でも,被害者との間で示談が成立していることは加害者にとって有利の事情となります。

​​示談が成立していることで加害者が反省していることや被害者の処罰感情が低くなっていることを捜査機関や裁判官に示すことが可能となり,検察官が不起訴として扱う可能性や刑事裁判で言い渡される刑罰が軽くなることが多くなります。

一方で,加害者側として被害者側との示談に応じない(できない)ということは,捜査機関や裁判官に対して,傷害事件に対して加害者自身が反省していることを示せず,起訴されてしまう可能性や量刑が厳しくなるリスクが高くなってしまいます。

示談しない場合の被害者の立場とは

被害者側が示談に応じてもらえない場合は,ケースごとに様々な理由が考えられますが,多くの場合は加害者への厳罰を望んでいると想定されます。

​​示談が成立できるかは,最終的には加害者側と被害者側の合意が必要となり,被害者側が加害者の厳罰を望む気持ちが強い場合には示談の成立が難しいことは少なくありません。

​​そのような場合でも,加害者側は,刑事事件の不起訴や刑罰の軽減を目指して,加害者が自身の行為を強く反省していることを示すために,被害者側との示談交渉には真摯に取り組むべきと考えられます。

示談しなかった場合の事件進行の流れ

被害者側との示談が出来なかった,または,行わなかった場合には,最終的に起訴や厳罰を受けるリスクだけでなく,加害者は事件の証拠を隠滅するおそれや処罰を恐れて逃亡を図る可能性が高いと判断される恐れもあります。

​​ 結果として,示談が成立した場合に比べて,加害者は,逮捕・勾留により身体的な拘束を受ける可能性も高くなります。 示談しなかった場合には,逮捕・勾留により身体拘束を受けることで,加害者は,生活や仕事に支障が出るだけでなく,起訴や厳罰を受ける可能性も高まり,加害者自身の今後の人生に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

示談金の相場と決定要因

被害額と示談金の関連性

示談をする上で,加害者側が被害者側に支払う金銭を示談金と言います。

​​示談金の金額は,被害者側がその金額で示談できるか,言い換えれば加害者側の賠償として満足できるか次第となるため,金額がいくらになるかはケースバイケースとなります。

​​ただし,被害者側は,一般に,傷害事件により生じた被害額(治療費や入通院にかかった費用,慰謝料等)と最低でも同額かそれ以上の金額を加害者側から賠償を受けることを希望するでしょう。

​​そのため,被害者側に生じた被害金額が大きくなるほど,示談金で支払いをする賠償金額も大きくなると想定されます。

示談金を払わない場合のリスク

示談を成立させる上では,最終的に被害者側が示談に応じてもらえるか否かが問題となってきます。

​​また,どのような傷害事件のケースでも示談金を加害者側が支払うのかいくら支払いをするのかは,被害者側にとって示談に応じるか否かを決める重要な要素になるでしょう。

​​加害者側が示談金を支払わない,支払う金額が低額となってしまう場合には,残念ながら被害者側との示談成立は非常に困難になると考えられます。

さらに,加害者側に示談金の支払いをしたか,いくら支払いをしたかは,示談が成立したか否かと合わせて,検察官が起訴をするかや裁判官が検討する刑罰の内容にも影響します。

​​示談金の支払いをしない場合には,示談の成立が困難となり,引いては起訴される可能性や厳罰を受ける可能性が高くなります。

弁護士による交渉の活動とそのメリット

弁護士が対応する内容について

これまでご紹介した通り,傷害事件の加害者側にとって,被害者側との示談成立は非常に重要な位置づけとなっています。

​​しかし,現実的な側面として,被害者側の人々は加害者側の人物と直接的な接触や連絡は避けたいと考える人は少なくありません。

​​また,加害者側が,被害者側の連絡先を把握できていないということも珍しくありません。加害者側としては,被害者側とコンタクトを取ることが出来なければそもそも示談交渉を始めることも難しくなります。

そのような場合でも,加害者側が代理人弁護士を就ければ,被害者側が弁護士ならばと示談のやり取りに向き合ってくれることがあります。

​​また,加害者側が被害者側の連絡先を把握できていない場合でも,弁護士ならば捜査機関に掛け合う等して被害者側の連絡先を調査することができます。

さらに,代理人弁護士がいれば,被害者側とコンタクトを取れた後も被害者側との示談交渉を弁護士に任せることが出来ます。

​​加害者側が示談交渉をする上で,どういった流れで進めるのがいいか,賠償する示談金は妥当な金額なのか,弁護士が依頼者にあたる方と相談・アドバイスしながら示談交渉を進めることが可能となります。

加害者側が自分たちで被害者側の人達と示談交渉をしていく上では,示談成立が難しくなる要素がいくつもあります。傷害事件の加害者側となってしまった場合には,代理人弁護士を選任することをお勧めいたします。

示談成立後の注意点

示談成立後の流れ

被害者側との示談交渉に成功して,示談が成立した場合には,すでに刑事事件化しているならば,捜査機関に被害者側との示談が成立したことを示す必要があります。

​​示談が成立する場合には,捜査機関に示談が成立したことを示すため,被害者側と示談書の取り交わしをするケースが多いです。

​​捜査機関に示談書を提出して,加害者本人が自己の行為を反省していることや被害者側の処罰感情が低いことを説明していく流れとなります。

傷害での不起訴処分について

刑事事件における起訴・不起訴の判断は検察官が行いますが,不起訴の理由には「嫌疑なし」・「嫌疑不十分」・「起訴猶予処分」の3種類があります。

​​このうち,「起訴猶予処分」は加害者が傷害行為を行ったことが明らかであるが,検察官が刑罰を科す必要がないと判断した場合に起訴猶予処分により不起訴となります。

加害者側と示談交渉をしていく場合には,この「起訴猶予処分」による不起訴を目指していく形となります。

​​検察官が起訴猶予処分により不起訴にするかどうかは,被疑者の動機・年齢・境遇・性格,事件における傷害の程度,犯罪後の事情などを要素に判断されます。

示談交渉の有無や示談の成立は,犯罪後の事情にあたり,不起訴の判断をする上で一つの要素に過ぎませんが,全体の要素の中でも重要な要素の1つであることは間違いありません。

不起訴の場合の罰則と前科の有無

示談の成立その他の要素により,不起訴となった場合には加害者本人に罰則や前科がつくことはありません。

​​一方で,起訴され刑事裁判となってしまった場合,現状の刑事裁判では起訴されると記録上99%の確率で有罪になると統計が出されています。

​​刑事裁判になった場合でも刑の執行が猶予される執行猶予付の判決が出される場合もありますが,起訴されてしまうと高確率で罰則を負い,前科が残ることになります。

全治期間と示談金の関係

被害者が負った傷害の程度によっては,被害者の通院や治療が終わるまでに数年あるいは数十年かかることもあります。

​​しかし,検察官が起訴の判断をする際に,検察官は被害者が負った傷害の程度はほぼ確実に把握しますが,被害者の治療が終わったか否かを考慮することは多くないと想定されます。

​​一方で,加害者側が被害者側と示談する上では,被害者側が示談に応じてもらうために,被害者側に生じた被害額を早めに把握する必要が出てきます。

加害者側としては,被害者の通院が終わるのを待ち発生した被害額を把握した上で示談交渉に臨みたいところでありますが,被害者の回復を待っている間に検察官から起訴される可能性がどうしてもあります。

​​そのような場合には,被害者の傷害の程度を踏まえて,想定される被害額を賠償することを検討する必要が出てくるでしょう。

示談交渉の経験を有する弁護士であれば被害者側の想定される被害額を検討することも可能でありますが,加害者自身で被害額を想定することは難しいため,このような点でも示談交渉に臨む際には代理人弁護士を就けることを検討した方がいいと言えます。

早期に示談を成立させるためには

傷害事件を犯してしまった場合,加害者側の目指す目標は,基本的に不起訴や罰則の軽減になってきます。

​​しかし,警察や検察官は,加害者側が被害者側と示談をすることを待ってくれるとも限りません。そのため,不起訴や減刑を目指して,被害者側と示談を成立させるためには早期に活動を開始する必要が出てきます。

​​前記のように加害者側が被害者側の連絡を把握できていないことや被害額が確定していないことは,早期の示談成立をする際にでも障害となってきます。

​​弁護士を就ければ,このような障害をクリアして,早期の示談成立を目指すことが可能となるでしょう。

まとめ

以上に見てきた通り,傷害事件において,被害者側との示談が成立するか否かは,加害者となってしまった人達にとって今後の人生にも影響する重要な要素と言えます。

​​もし,傷害事件の加害者となってしまった場合には,早期に弁護士に相談し,被害者側との示談に臨むことをお勧めいたします。

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