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弁護士コラム Column

身元保証契約

2017年03月01日
日進赤池事務所所長 弁護士 森田 祥玄

近時は,採用難に伴う法律相談を企業から受けることが増えました。名古屋などの都市部では基本給は上昇を続け,仕事はあるが人がいないという企業も増大しております。以前に比べ,解雇に伴う相談は減少し,その分,引き抜きに対する対応や離職に対する対応,待遇改善要求に関する相談を受けることが増えました。

今回は,採用担当者の皆様のために,採用に伴い知っておくべき知識である,身元保証契約に関しコラムを作成します。

当事務所では,企業側で身元保証人に対し損害賠償を求める案件のご依頼を受けたことがあります。他方,それとは逆に,身元保証人側の立場で損害賠償を求められている案件のご依頼を受けたこともあります。名古屋地方裁判所では,古くから一定数の身元保証契約に伴う裁判が係属します。身元保証契約については,企業側も,サインをする身元保証人側も,正確な知識を得ておく必要があります。

身元保証に関しては,身元保証法という,現在でも効力を有している古い法律があります。企業の採用担当者は,短い条文ですので,一度は読んでおきましょう。
身元保証契約は,期間の定めがなければ,有効期限は「3年」とされております。そして期限の定めがあれば最大で「5年」とされております。
特に企業側の採用担当者は理解して頂きたいところですが,身元保証契約は自動更新の規程が無効とされております。市販の書式やインターネットで見つけた書式を加工して使用している場合,いざ紛争となった時に無効となる条項が組み込まれていることがあります。顧問弁護士,顧問社労士に一度は相談をして,書式の作り直しを検討した方がよいでしょう。

企業側からは,5年以上身元保証契約を継続してもらいたいときはどうすればよいのかという疑問がでるかと思います。そのような希望がある場合は,5年経過後に再度,身元保証契約の契約書に,身元保証人から署名,押印をもらえばよいのです。
なかなか5年も経って身元保証契約書を再度もらうのは気が引ける,という思いもあるかもしれません。しかし会社のルールとして,ルーティーンで5年ごとに身元保証契約書を受領する仕組みさえ作れば,それほど事務作業の負担感のあることでもありません。定期的に身元保証契約書を結んで貰うことは,検討してよいだろうと思います。

また,いざトラブルとなった際も,企業側は早急に対応を検討する必要があります。従業員からは,「身元保証人には内緒にして欲しい」とお願いされることもあります。しかし,身元保証人に内緒にした結果,問題が生じたあとにさらに損害が拡大した場合,拡大した損害については身元保証人への請求が制限される可能性があります(身元保証法3条,5条)。今まで仲間であった従業員のトラブルですので,法的手続を取りにくい気持ちになりがちで,現場でのかばい合いも発生することもありますが,早急に弁護士に相談のうえ,損害回復にとって最善の方法を取らなければいけません。

では,損害賠償に関し企業から連絡があった身元保証人の立場からすれば,どのように対応するのがよいのでしょうか。
まずは,上記のとおり,身元保証契約には有効期限が法定されております。冷静に,本当に支払う義務があるのかを確認すべきでしょう。入社から5年以上経過しており,実際には支払う義務がない,という法律相談も珍しくはありません。
また,会社側の過失,身元保証の経緯,自分の経済状況や当該従業員との人間関係を説明し,減額をお願いすることもあります。
但し,実際に身元保証人に請求がされる事案は,複雑に人間関係が絡むシビアな場面も多くあります。例えば横領などの犯罪行為が行われた場合,当該従業員の今後の人生に大きく影響します。企業側も,被害弁償を行わなければ刑事告訴を行わざるを得ないこともあります。通常は身元保証契約を締結するのは親族などの親しい間柄です。法律論は十分に認識したうえで,しかし話し合いによる解決を弁護士とともに模索してください。

企業側であっても,身元保証人側であっても,身元保証契約に伴うトラブルは,法律と感情,そして企業や従業員の将来が交錯する重要な局面です。一度は弁護士に相談して頂いた方がよいでしょう。

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