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弁護士コラム Column

【弁護士が解説】特別寄与料とは|誰がいくら請求できる?期限・証拠・手続き

2025年12月03日
岐阜大垣事務所  弁護士 大石達彦

特別寄与料とは?

特別寄与料という制度は、相続人以外でも、被相続人(亡くなった方)の相続に当たって、金銭の請求をできるという制度です。

​ ​これは民法に定めのある制度で、民法では、

「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」(民法1050条1項)

と定められています。

これだけ読んでも何のことか分かりにくいかもしれませんが、簡潔にいうと、相続人以外の親族で、無償で被相続人の看病や労務の提供をして被相続人に貢献した人は、相続人に対してその貢献の度合に応じて金銭を請求できる、というものです。

誰が請求できる?

相続人以外の者が請求できると説明しましたが、被相続人の療養看護に努めたものは誰でも請求できるわけではありません。請求できるのは相続人以外の親族に限られています。

​ここで、親族とは

  1. ①六親等内の血族(父母、子供から高祖父母の祖父母等まで含む)
  2. ​②配偶者(夫、妻)
  3. ​③三親等内の姻族(配偶者の親、子から配偶者の叔父叔母、配偶者の甥姪等まで含む)

​をいいます(民法725条)。

特別寄与料を請求できる方の具体例としては、妻が夫の父親の療養看護をした場合において、その父親が亡くなった場合には、当該妻は特別寄与料の請求ができる可能性があります。

ただ、相続人以外の親族であっても、以下の3パターンのどれかに当たる場合は特別寄与料の請求はできません。

  • ・相続放棄をした人
  • ・相続人の欠格事由に当たるとされた人(例:被相続人や先順位の相続人を故意に死亡させる等相続人として扱うことが信義に反するような場合です)
  • ・相続廃除をされた人(被相続人に対する虐待、侮辱や著しい非行が認められた場合です)

これらの方は、元々相続人としての地位があったが、後から相続人ではなくなった人達です。

寄与分と特別寄与料の違い

特別寄与料と混同しやすい制度として「寄与分」というものがあります。ここではその寄与分とは何か、特別寄与料とは何が違うのかを説明します。

寄与分とは、簡潔に説明すると、被相続人の療養看護や家事従事、金銭出資、財産管理などによって、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人が、通常もらえる相続分に加えて、自己の貢献の程度に応じた財産を受け取れるというものです。

​特別寄与料と寄与分は、被相続人の財産維持・増加に貢献した場合にその貢献の度合いに応じて財産を受け取れるということは同じです。一方で、特別寄与料と寄与分には以下の違いがあります。

請求権者

先ほど説明しました通り、特別寄与料については、請求できるのは相続人以外の親族の方です。一方で、寄与分を主張できるのは相続人です。この通り、主張できる人が異なるということです

認められる状況

寄与分については、金銭出資や財産管理による貢献でも認められる可能性がありますが、特別寄与料については、療養看護と労務の提供による貢献の場合に限定されています。

請求方法と請求期限

寄与分は遺産分割の場面で主張するもので、具体的に何年といった期限設定はされていません。したがって、遺産分割が終わるまでという制限はありますが、それまでであればいつでも主張できます。 

一方で、特別寄与料については、具体的な期限が定められており、「相続開始と相続人を知ってから6か月以内」または「相続開始から1年以内」のうち早いときまでに請求しなければなりません。

期限(いつまで?)

次に、特別寄与料の請求期限について見ていきましょう。

特別寄与料以外の請求権においても5年あるいは10年の時効が存在しますが、特別寄与料については、他の請求よりも請求期限が短いため十分注意する必要があります。

​特別寄与料については、「相続開始と相続人を知ってから6か月以内」あるいは「相続開始から1年以内」の早い時点までに請求する必要があります。なお、相続開始とは被相続人が亡くなった日をいいます。

ここで一点注意しなければならないのは、2つの基準時のうち早い時点までに請求しなければならないということです。

例えば、3か月ほど前に相続の事実を知ったが、相続自体(被相続人が亡くなった時点)は1年以上前だった、という事案においては特別寄与料の請求はできないことになります。

介護・看護の証拠を“具体的に”集める

被相続人の療養看護を行ったとして特別寄与料を請求するためには、療養看護などを行ったという証拠が必要となりますが、どのような証拠を集めるべきか、また、どのようにして証拠を集めるかについて説明します。

​療養看護の証拠としては、一般的には次のようなものが考えられます。

  • ・介護日誌
  • ・カルテや診断書
  • ・介護費用のレシート、領収書

まず、第一にどのような介護を行ったか分かる記載がされている介護日誌は療養看護のための証拠となるでしょう。

​カルテや診断書によって被相続人がどの程度介護が必要だったかが分かるようになり、また、介護日誌の裏付け・信用性を高めるという意味でも重要な証拠となるでしょう。​カルテや、診断書は被相続人の主治医から取り付けるとよいでしょう。

​介護費用のレシート、領収書については、介護に必要な道具や器具等を購入したという証拠になるので、このような器具を購入した場合はレシート等をしっかり保管しておくことが重要となります。

よくある質問(FAQ)

これまで特別寄与料の概要について説明してきましたが、ここでは、特別寄与料についてよく皆様からご質問いただく内容について説明します。

Q.遺言がある場合特別寄与料の請求はできないのか

​A.基本的に遺言がある場合は特別寄与料の請求はできません。

​特別寄与料の要件は無償であることが必要なため、遺言によって財産を譲り受けるなど、療養看護の対価をうけとっている場合は特別寄与料の請求はできません。

Q.生活費の立替や送迎だけでも対象になるのか

​A.それのみでは請求できません。

特別寄与料は被相続人に対する療養看護や労務の提供に対するものなので、単に被相続人に生活費を渡していた、立て替えていた、被相続人の送迎をしていたという事情のみでは療養看護、労務の提供には当たらないとされることが多いです。

Q.同居家族全員で介護した場合の按分割合はどのようになるのか

A.当事者間で按分額について話し合いがまとまればその額ということになります。

​一方で、協議でまとまらなかった際は、裁判所に按分額を決めてもらうことになりますが、その際には、寄与の時期、方法、程度等あらゆる事情を考慮して、寄与料を決定することになります。 ​

そのため、証拠集めのところでも述べましたが、介護日誌のように、いつどのように寄与したのかが分かるようにしておくことが大切です。

Q.生前に謝礼を受け取っていた場合には特別寄与料の請求ができるか

A.謝礼の趣旨が、寄与者の療養看護等の対価であると評価された場合には特別寄与料の請求はできません。

​特別寄与料は、無償で療養看護等に努めた場合に認められるものなので、当該謝礼が、療養看護の対価である場合、無償とは言えないからです。

弁護士に依頼するメリット

特別寄与料の請求自体は、ご自身で行うことも可能です。しかし、以下の観点から弁護士に依頼することをお勧めします。

まず、上のQ&Aにも記載しましたが、自分が行った行為が特別寄与料の対象内か否かという点は、各事案によって異なり、非常に専門的な知識が要求。そのため、自分の貢献が特別寄与料にあたらないとあきらめてしまう前に、一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

また、特別寄与料を請求する場合に相続人との話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所に対して、特別の寄与に関する処分調停を申立てる必要があります。

​調停になった場合、調停委員がこちらの言い分と相手方の言い分を聞き、解決案を提示する等して、お互いに合意するための手助けをしてくれます。話し合いを有利に進めるためには、調停委員にこちらにとって有利な事情を、証拠をもって説明する必要があります。

先ほど申し上げたこととも関連しますが、何が自分にとって有利な事情で、その証拠としてはどのようなものが考えられるのかという点は、非常に専門的な内容であり、調停に慣れた弁護士に相談しなければ有利な事情や証拠の見逃しのリスクが出てきてしまい、思わぬところで不利に調停が進んでしまうことが考えられます。

また、調停申立ての手続き自体が煩雑で時間がかかるものです。その手続きをご自身で調べながら行っていては非常に時間がかかりますし、上でも申し上げた通り、特別寄与料の請求期限は非常に短いものとなっています。

​手続きが分からないために放っておいたら期限が過ぎていたということになりかねません。弁護士に依頼すれば煩わしい手続きもなくスピーディーに申立することができます。

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