義理の娘(長男の嫁)に遺産を相続させられるか

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弁護士コラム Column

義理の娘(長男の嫁)に遺産を相続させられるか

2023年08月16日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 長沼 寛之

人が亡くなった場合、故人の権利義務を承継する相続が発生します。相続が発生した際、相続人の間で話し合いをしなければならないということはご存知かと思います。これを遺産分割協議といいます。

​遺産分割協議のスタートの段階のポイントは3つで、相続人の確定と遺言の有無の確認、相続財産の調査です。遺言や相続財産の話は他のコラムに譲り、私のコラムでは相続人の確定(遺産の取得者)についてご説明します。

相続の順位、法定相続人とは?

相続人については、民法が規定しています。 第1順位は子、第2順位は直系尊属(親や祖父母)、第3順位は兄弟姉妹です。配偶者(夫や妻)は各順位の相続人と並んで常に相続人になります。第1順位の子がいるときは子と同列となり、第2順位の親しかいない時は親と同列となります。

​​つまり、配偶者は、相続が発生したときの最上位の相続人と同列になります。第1順位の相続人がいた場合は第1順位と同列となりますが、第2順位しかいなかった場合は配偶者が第1順位となることはなく、第2順位と並ぶにとどまることに注意が必要です。  

​​配偶者以外の法定相続人である子、直系尊属、兄弟姉妹は、いわゆる血のつながりのある人(血族)を対象としており、血のつながりのない義理の親等は相続人に含まれません。

相続人関係図①

義理の父が死亡した時、既に夫が死亡していた場合、相続人は誰になる?

以下のような場面では相続人は誰になるでしょうか。

相続人関係図②

相続人はXで、第1順位の法定相続人である子AはXより先に死亡していたとします。  

​​先の説明を前提とすれば、Xから見て第1順位の法定相続人である子がいないということになるため、第2順位や第3順位の法定相続人の有無を確認していくということになりそうです。

​​
甲から見れば、Xは義理の親という関係(姻族)になりますが、Xと甲との間には血のつながりはないので、残念ながら甲は相続人になりません。

上記の図②のケースで、Xの相続人が誰になるかというとAの子(Xの孫)であるYになります

​​このような結論になる理由は、代襲相続にあります。代襲相続とは、ある被相続人(図②のX)が亡くなった時に、その法定相続人(図②のA)に死亡等の事由が発生していた場合に、法定相続人の子(図②のY)が相続人となることをいいます。

したがって、図②のケースではYが相続人になります。

なお、現行法制度上、相続においては胎児は既に生まれたものとみなすと規定されているので、「子」には胎児も含まれています。

義理の娘や息子に遺産を渡す方法はないのか?

図2のケースを少し改変して、甲A夫婦の間に子Yがいなかったとします。また、被相続人Xの両親や祖父母は既に他界していたと仮定します。  

​​そのようなケースで、法定相続人を確認すると、まず第1順位である子はいません。また、第2順位である直系尊属(親など)もいません。そうすると、第3順位である兄弟姉妹が相続人となります。

​​先ほどもお伝えした通り、血のつながりのない甲は被相続人Xの相続人にはならず、遺産を受け取ることができません。

しかし、このような結果が被相続人Xの望むような結果でない場合があります。

例えば以下のような例ではどうでしょうか。

”もともと、被相続人Xは、息子であるAとAの妻甲の3人で生活していた。Aは仕事で忙しく、日常家事全般は専業主婦であった甲が行っていた。不幸にもAが若くして亡くなり、Xは甲と2人で生活していた。その後、Xは年齢とともに介助なく日常生活を送ることが困難となってしまったが、Xの身の回りの世話は甲が献身的に行っていた。 
​​​他方、Xは兄弟姉妹とは疎遠であり、年に数回会う程度の関係性であった。”

上記のようなケースであれば、被相続人Xとしては、疎遠だった兄弟姉妹より面倒を見てくれた甲に財産を残してあげたいと思うことが自然ではないでしょうか。仮にXと甲が住んでいた自宅がX名義であった場合、相続人によって自宅の名義人が変われば甲が自宅から追い出されることもありえます。

このような事態を回避し、被相続人が相続人以外の方に遺産を取得させる方法として、遺贈という方法があります

​​特定の人に財産を取得させる旨を遺言として残して財産を取得させる方法です。ここでいう「特定の人」は、相続人でも、相続人でない人でも問題ありません。したがって、先のケースでいえば、甲も遺贈を受けることができます。

また、遺贈の方法としては、財産の一切を渡す形(包括遺贈)と特定の財産のみを渡す形(特定遺贈)があります。先のケースで、住み続ける必要があるから自宅は甲に渡すけれども、それ以外の預貯金は兄弟姉妹に相続させるといった内容が実現できます。

相続手続きを弁護士に相談するメリット

生前に何もせずに死亡した場合、遺産は法律に規定されている相続人の間で、法律に規定されている割合に近い形で承継されます。非常にお世話になった方がいたり、逆に疎遠になってしまった身内がいたり、人間関係は様々です。

​​法律に規定された内容と異なる形で遺産を分配したいと考える場合は、事前(生前)に準備しておく必要があります。

その一つが遺言です。遺言はご自身のみで作成することも可能ですが、有効な遺言を作成するためには様式の要件を満たす必要があり、単独での作成が難しいことがあります。

他にも、単独で作成した場合、誰かに入れ知恵され、言われるがままに作らされているのではないかといった物言いがつき、遺言の効力を争われることもあります。その点、弁護士が遺言作成に関与していれば、第三者が介入しているため、言われるがままに作成したのではないとの一定の信頼が生まれます。

また、遺言などで遺産を分配する場合、分配の割合を注意しなければならないケースもあります。

​​遺留分という制度があるので、兄弟姉妹以外の法定相続人は一定割合の金銭を受領できます。適正な遺留分侵害額請求がされた場合、現行制度では請求を受けた側は侵害している遺留分の額に応じて、金銭の支払いをしなければなりません。

​​遺留分侵害額請求を受けた人が取得していた遺産が容易に現金化できるものであれば問題は生じません。

​​しかし、取得した遺産が自宅不動産だった場合は、住む家はあるけれど請求された遺留分の支払いに現金を使ってしまい、貯金がなくなって困るといった事態もあります。遺産を取得させたことで、逆に取得した人を困窮させる場合もあるということに注意が必要です。

そのようなことを回避するためには、遺留分を踏まえて遺産を分配することが重要です。

終活を考えておられる方は、ご自身の希望が実現できるか、弁護士に相談されることをお勧めします。

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