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弁護士コラム Column

特別縁故者に対する相続財産の分与について弁護士が解説

2023年08月31日
東京自由が丘事務所  弁護士 松山 光樹

特別縁故者に対する相続財産の分与とは?

Aさんは、長年、内縁の配偶者Bと一緒に生活をしてきましたが、Bさんが亡くなってしまいました。Bさんは他に親族がおらず、相続人もいないようです。また、Bさんは遺言も作っていませんでした。

​​このような場合に、AさんはBさんの財産を相続することができるのでしょうか。

AさんはBさんと婚姻していたわけではなく、相続人ではないため、今回のケースでAさんはBさんの財産を相続することはできません。

​​しかしながら、Aさんは長年Bさんと一緒に生活しており、他に相続人もいないのに、財産を全くもらえないというのも酷に思えます。

​​このような場合に、特別縁故者に対する相続財産の分与という制度が用意されています(民法958条の2)。

​​今回は、この制度について解説していきます。

相続人がいない場合には、相続財産管理人の申立て及び選任がされることがあります。

​​相続財産管理人は、相続人がいるかどうかを所定の手続で確認します。その手続により相続人がいないことが確定すると、特別縁故者であると主張する者が相続財産を分与してほしいとの申立てをして、裁判所が相当と認めた場合には、財産の全部又は一部を与える判断をすることができます。

特別縁故者になれる要件とは?

法律上は、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他相続人と特別の縁故があった者」と定められています(民法958条の2第1項)。

例としては、冒頭のケースのような内縁の配偶者や、積極的に看護・介護を行っていた親族等が挙げられます。個人に限らず、法人が特別縁故者として認められることもあります。

証明方法は何がある?(上記の対象となる人の証明手段、証拠について)

特別縁故者かどうかは裁判所が判断することになるため、裁判所に対し、自分が特別縁故者であることが分かるような証拠を出す必要があります。

​​療養看護に努めた者として申立てをする場合は、例えば医療費等の領収書や、亡くなった方とのやり取りが分かるメモ等が挙げられると思います。

もっとも、事案によってどのような状況だったかは大きく異なるところですので、事案ごとにどのような証拠があるのか丁寧に確認をしていく必要があるでしょう。

遺産を受け取るための申立について

相続財産を分与してほしい場合に、いきなり特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てをすることができるわけではありません。

​​まずは相続財産管理人を選任してもらい、相続財産管理人の調査により相続人がいないことが確定してから行う必要があります。

​​また、申立ては、相続人がいないことが確定して3か月以内に行う必要があります。

このように、特別縁故者に対する相続財産の分与の制度は、相続財産管理人の制度と切っても切れない関係になります。

​​相続財産管理人による相続人の確認の手続は官報を通して行われ、気づかないケースも多いことから、実際には、特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てをしたいという理由から相続財産管理人の選任の申立てをする、というケースの方が多いのではないかと思います。

申立てをしたら、裁判所が内容を見て、分与を認めるのか、認めるのであればいくらを認めるのかを判断することになります。

申立後、特別縁故者と認められないケースはある?

特別縁故者に対する相続財産の分与の申立てをしても、亡くなった方とのつながりが薄かったり、亡くなった方の生前の言動から財産を引き継がせる意思があったとは言いづらかったりするケースでは、特別縁故者と認められないことがあります。

​​また、特別縁故者と認められても、生前に亡くなった方の預貯金を使い込んでしまった等、不相当と認められる場合には分与が認められないことがあります。

弁護士に相談するメリット

以上のとおり、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、相続財産管理人の選任とセットで行われ、相続財産管理人選任の申立てからしなければならないケースが多いと思います。

​​相続財産管理人選任の要件を満たすか、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ての要件を満たすか、それぞれに必要な書類が何か等、検討・準備しなければならないことが多く、実際に準備をすることは大変です。

弁護士に相談することで、そもそも各要件を満たしているのかどうかの見通しをつけることができたり、必要書類の準備をしてもらうことができたりするため、この点はメリットになるのではないかと思います。

なお、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、亡くなった方に相続人がいないことが前提になります。

​​相続人がいる場合には特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをすることはできませんが、一定の要件を満たす場合には、別の制度として、特別の寄与(民法1050条。ただし、亡くなった方の親族である必要があります。)を請求することができることがあります。

​​また、これらの制度は亡くなった後の話ですが、亡くなる前であれば、遺言を作成する等により、相続人でない人に財産を遺せることもあります。

このように、これまでの生活状況、相続人がいるかどうか、亡くなる前か後か等で取るべき手段が変わってくるところであり、状況に応じて、適切な手続きを見極めることが重要です。

​​大切な方について万が一のことを考えるのはやりづらいところもあるかもしれませんが、時間が経ってしまうと取れる手段も少なくなってきてしまいますので、お困りの方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

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