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弁護士コラム Column

不貞行為とはどこから?浮気との違いを弁護士が解説

2023年10月19日
名古屋丸の内本部事務所  弁護士 坪内 みなみ

はじめに

「不貞行為」にあたる場合、夫婦の離婚原因となったり、慰謝料請求の理由となったりします。

​​そのため、不貞行為にあたるかどうかは、不貞行為をした側、不貞行為をされた側の両方にとって非常に気になるところだと思います。

今回は、 これは浮気だと思うけど慰謝料の請求はできるの? 慰謝料ってどれくらい請求できるの? どうすれば慰謝料の請求ができるの? といった、不貞行為に関するよくある疑問にお答えします。

不貞行為の定義について

夫婦には、法律上、互いに貞操を守る義務があります。つまり、不貞行為とは、この貞操を守る義務に違反する行為、ということになります。

​​具体的には、配偶者以外の人と自由な意思のもとに性的関係を結ぶこと、です。

​​これは、男性であっても女性であっても同じです。また、一時的か継続的かは問いません。

​​ 「自由な意思のもとに」と限定されているので、他人から強制されて性的関係を持った場合には、不貞行為にはあたりません。そのような場合には、「不貞にあたるのではないか・・・」と不安に思うのではなく、すぐに警察などに相談してください。

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浮気と不倫との違い

「不貞」と似たような意味で、「浮気」や「不倫」という言葉が使われることがあります。 「浮気」や「不倫」は、法律用語ではない点で「不貞」と異なります。 「不貞」は、離婚理由として、法律に定められています(民法770条1項1号)。

​​ どこまでを「浮気」や「不倫」と言うかは、そのときの事情や人の価値観によって異なり、はっきり決まっていません。

​​一般的に、「浮気」という言葉は、結婚していない男女においても使われています。 対して、「不倫」という言葉は、多くは結婚している男女に対して使われています。 パートナー以外の人と2人で食事に行くことが「浮気」や「不倫」にあたる、と言う人もいれば、「浮気」や「不倫」にあたらない、と言う人もいます。

一方で、「不貞」は、結婚している男女において、配偶者以外の人と「性的関係」を持つことに限定されています。

​​ そのため、「不貞」という言葉が使われるのは、

  • ① 結婚していること 
  • ② 配偶者以外の人と性的関係を持ったこと
  • ③ 自由な意思で性的関係を持ったこと

の3つが当てはまる場合に限定されていると考えることができます。

ちなみに、内縁関係(いわゆる事実婚の関係)にある場合でも、法律上の婚姻関係にある場合と同じように保護され、慰謝料請求が認められることがあります。

不貞行為に該当しやすい例

不貞行為と認められるのは、性的関係を持ったとき、つまり「肉体関係があった」と認められる場合です。 具体的には、次のような場合です。

性行為を行った場合

直ちに不貞行為と認められます。 また、性行為に至らない場合でも、性行為に類似する行為も不貞行為として認められます。 仮に1回限りであったとしても、肉体関係を持った以上は不貞行為にあたります。

同棲している場合

同棲していることから、直ちに肉体関係があったと分かるわけではありません。しかし、一緒に生活しているという状況から、肉体関係があったものと考えられます。​

ラブホテルに2人で長時間滞在していた場合

ラブホテルという場所の性質上、2人で長時間滞在しているという状況から、肉体関係を持ったものと考えられます。 このような場合、「2人でいたけど何もしていない、肉体関係はなかった」という主張は認められにくいです。

2人で宿泊を伴う旅行をしていた場合

この場合も、明らかに肉体関係があったとは言えませんが、宿泊をしている以上、性的関係を持ったということを推認することができます。​

性行為を行ったことを前提とするメッセージのやり取りがあった場合

性的関係を持ったということがメッセージの内容から読み取ることができる場合には、不貞行為が認められます。 例えば、ラブホテルでの待合せの約束や、裸の写真のやり取りなどは、性的関係を持ったと考えることができます。

これらの行為に該当する場合でも、配偶者や不貞相手に慰謝料請求ができるかは、別になります。

​​この点については、後で解説していきます。

不貞行為に該当しにくい例

人によっては「浮気」や「不倫」にあたる行為でも、「不貞行為」にはあたらない場合があります。

肉体関係に至らない行為のみの場合

他の異性と手を繋いでいたり、キスをしていたりする場合、「浮気している」と考える人もいるかもしれません。
​​しかし、不貞行為と認められるためには、肉体関係があったことが必要です。

​​親密な関係にあることが分かる場合でも、肉体関係があったとまでは認められない場合には、不貞行為には該当しません。

好意を伝えるメッセージのやり取りのみの場合

「好き」や「愛してる」といったメッセージのやり取りをしていた場合も、「浮気だ」と思うかもしれません。 しかし、そのようなやり取りだけでは、肉体関係があったとは認められません。

​​それを超えて、肉体関係があることを前提とするやり取りがされている場合には、不貞行為と認められる可能性があります。

2人で出かけている場合

異性と2人で食事に行ったり、出かけたりしている場合、それだけでは肉体関係があったということはできないため、不貞行為にはあたりません。

このようなケースでは、「不貞行為」とは認められない可能性が高いです。

​​しかし、配偶者以外の人と頻繁に会っていて家庭を顧みないなど、婚姻生活の継続に重大な影響を与え、破綻の原因となっているような場合には、離婚請求や、慰謝料請求が認められることもあります。

不貞行為をされた場合の離婚の進め方

まず、離婚の方法としては、大きく分けて以下の3つがあります。

協議離婚

夫婦の話し合いで離婚する方法。夫婦が合意をすれば離婚をすることができます。

調停離婚

裁判所に間に入ってもらい調停の手続の中で話し合い離婚する方法。調停の中で合意に至れば離婚をすることができます。

裁判離婚

離婚訴訟を提起し裁判所から離婚の判決をもらって離婚する方法。離婚事由(民法770条1項各号)があれば離婚が認められます。不貞行為があったときは法律上の離婚事由に該当するため(1号)、離婚が認められます。

どの方法が適切かは、離婚にあたって求める条件、相手との話し合いの状況、必要な費用などを考慮することになります。 すでに別居を開始している場合には、婚姻費用(生活費)を請求できることがあります。

​​「まず何から動けばいいのか分からない・・・」という場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。

不貞行為を原因として離婚請求や慰謝料請求をする場合の注意点

不貞の証拠はある?

不貞をした配偶者や不貞相手が当初不貞を認めていたとしても、後になって急に態度を変え認めなくなることがあります。

​​その場合、不貞の証拠がないと、裁判所で主張したとしても離婚請求や慰謝料請求は認められません。

​​そのため、不貞行為をされた場合には、証拠を集めておく、ということが重要になります。 証拠は時間が経過するほど消滅してしまうことが多いので、証拠がある場合には、それを保存しておく必要があります。

婚姻関係が破綻していないか?

配偶者と長期間別居をしていて、夫婦として生活していないような状態の場合、不貞行為があったとしても離婚請求や慰謝料請求は認められません。

​​このような状態では、婚姻関係が破綻しているため、貞操を守る義務がないとされるからです。

​​そのため、不貞行為を原因として離婚請求・慰謝料請求をする場合には、婚姻関係が維持されている必要があります。

不貞行為を言いふらすのは危険?

不貞の証拠や不貞をしたという事実を、不特定多数の人に拡散してしまうと、名誉棄損にあたるとして加害者になってしまう可能性があるので、注意が必要です。

時効に注意!

不貞行為を原因として慰謝料を請求する場合、不貞行為を知ってから3年間行使しないと時効で消滅してしまいます。

証拠になりやすいもの

すでに述べたように、不貞行為とは肉体関係を持つことを意味するので、明らかに不貞行為があったと考えられるものが証拠になりやすいです。

​​ 例)

  • ・相手方が肉体関係を持ったことを認めている発言を記録した録音​、メッセージのやり取り
  • ・不貞行為の現場の写真​、動画
  • ・2人でラブホテルに出入りしている写真 ​
  • ・肉体関係を持ったことを前提とする不貞相手とのメッセージのやり取り

不貞行為の慰謝料請求の流れについて

不貞行為をされた場合、

  • ・不貞行為をされたことで受けた精神的損害に対する慰謝料
  • ・不貞行為により離婚に至ったことで受けた精神的損害に対する慰謝料

が発生します。 一般的には、後者の方が高額になると考えられています。

不貞行為を原因とする慰謝料請求については、不貞相手と不貞をした配偶者のどちらに対しても請求することができます。

​​この場合、不貞行為を行った2人の行為により損害が発生した、ということになるので、配偶者から慰謝料の全額の支払を受けた場合には、不貞相手に慰謝料を請求することはできません。その反対も同じです。

​​まずは慰謝料請求の一般的な流れを説明します。

① 慰謝料の支払の交渉

不貞をした配偶者や不貞相手に対し、慰謝料の支払を求め、その額や支払方法について交渉します。 これは、自分で直接交渉することも、弁護士に交渉を依頼することもできます。 話し合いで解決できる場合でも、後でまた争いにならないために、お互いの署名・押印をした書面を交わしておくとよいです。

② 調停や訴訟の提起

不貞をした配偶者や不貞相手が応じてくれない場合には、次のステップとして、裁判所を利用した手続(調停や訴訟)をとることが考えられます。 ただし、実際に請求が認められるためには、不貞の証拠が必要になってきます。

③ 支払を強制する手続

慰謝料請求が認められたのに、相手から支払われない、という場合には、裁判所に申立てをして強制的に支払を受けることができます。

配偶者への慰謝料請求

配偶者に慰謝料を請求する場合、離婚条件の一つとして財産分与などと一緒に話し合いのポイントになることが多いです。

実際に慰謝料はいくらくらい請求できるのか、という点については、配偶者と金額の合意ができればその金額になりますが、明確に決まってはいません。 裁判では、不貞行為までの婚姻期間の長さや、不貞行為に及んだ期間、不貞行為を行った人数、子の有無、婚姻関係が破綻に至ったか、などといった個々の事情を考慮して判断されています。

​​認められる額としては、数十万円~200万円が多いですが、特別の事情がある場合には、高額な慰謝料が認められるケースもあります。

慰謝料1000万円が認められた事例

婚姻関係が25年以上継続して子どももいたところ、突如妻と不貞相手が国外に出ていき、経済的に苦境に立たされ、その後不貞相手と妻が夫の生活圏内で同棲を開始し、不貞相手が夫の住んでいるところに仕事のため毎日のように通ってきていたケース(東京地判平成14年7月19日)。

慰謝料400万円が認められた事例

夫が不貞関係を秘匿したまま2人の乳幼児を抱える妻に理不尽な言動を続けた上、一方的に別居を強行して不貞相手と同居し、不貞相手も出産して関係を継続させたケース(東京地判平成21年3月25日)。

不倫相手への慰謝料請求

不貞相手へ慰謝料請求をしようと思った場合、そもそも不貞相手が誰なのか、ということが問題になることがあります。 その場合には、自分で調査するにも限界があるため、調査から弁護士に依頼することが考えられます。

また、不貞相手への請求においては、不貞相手が既婚者であることを知っていたか、知らなかったことについて過失が認められる必要があります。

​​そのため、不貞相手が既婚者であると全く知らずに不貞行為を行った場合には、請求が認められません。

​​ この不貞相手の「故意又は過失」は、請求する側が証明しなければなりませんが、不貞行為があったという証拠があれば、認められる可能性は高くなります。

慰謝料が高額になりやすい例まとめ

すでに少しご紹介しましたが、慰謝料の額については、不貞行為の内容や、夫婦関係に与えた影響によって、高額になるケースがあります。

  • ・不貞行為によって夫婦関係が破綻に至った場合 ​
  • ・出産直後や小さい子どもがいる場合 ​
  • ・不貞行為が長期間に及んでいた場合 ​
  • ・夫婦関係に全く問題がなく円満であったにもかかわらず不貞行為を行った場合
  •  ​・不貞行為だけでなく暴言や暴行を行っていた場合
  •  ​・不貞行為により配偶者を経済的に困窮させた場合

これらの事情が積み重なれば、その分慰謝料の額も高額になりやすくなります。

不貞問題を弁護士に相談するメリット

不貞行為をされた場合、そもそも不貞相手が誰なのか、分からないこともあります。

​​自分で調査をしてみたとしても、 乗っている車は分かるのに名前がわからない・・・
​住んでいる場所は分かるのに名前がわからない・・・ ということがあります。


​​このような場合、弁護士であれば、その職務上調査を行うことも可能です。

また、不貞行為をされた場合、精神的に負担がかかり、自分で交渉するのは大変だし辛い、仕事や家事で忙しい、と思われる方も多いと思います。

​​そのような時は、弁護士に依頼することで、相手と交渉するストレスを減らしたり、仕事や家事・育児などに専念したりすることができます。

このように、不貞行為があった場合、弁護士に依頼するメリットも大きいといえます。 不安な気持ちを抱えたままにせず、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

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